にっき

@baby_zyou

During Dead of Night

ㅤ空に浮かぶ星々がくっきりと見えるほど深い深い夜。俺はただ1人、何をする訳でもなく駅のホームで突っ立っていた。

ㅤ「まもなく、一番線ホームに快速急行新宿行きが十両編成でまいります。危ないですから、黄色い線の内側でお待ちください」

ㅤ吐き気がするほど人の溢れかえるホームに響くアナウンス。その音声は嫌に静かなホームで反響し、はっきりと鼓膜から入り脳へと広がっていった。

ㅤ「並ばなきゃ」

ㅤ使命感にかられながらも流れていく人々に身を任せ、俺は待機列の後ろに並ぶ。

ㅤ音楽プレーヤーに繋がれたイヤホンを耳に繋いだがそこから聞こえてくる音は何も無かった。

ㅤいったいあと、どれほど待っていればいいのだろうか。列の一番前から電光掲示板のほうを見やるとぼやけて何も理解することが出来なかった。

ㅤ何故? そんな疑問も浮かばないまま突如背中へと訪れた衝撃と線路に落ちてゆく身体。あまりに唐突な出来事に思わず目を見開いた。

ㅤ誰がこんなことを。

ㅤ傾き落ちていく中、この目で見たのは嫌でも見覚えのあるニヤケ顔。

ㅤそんなこと、どう考えてたってありえるわけがない。でも、それでも、確かにそこにいるその顔は――


ㅤ「――俺」


ㅤ電車の警笛とけたたましく鳴るブレーキ音。

ㅤこの時1人目の俺が死んだのだ。

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