第2話 リアン攻略 愛しのエリーちゃん

はい!わたくし昨日!エドワルドという名のう〇こ野郎により!前世の!記憶を!思い出しました!アリス・キャリル・リウォンダーでございます!

この世界が乙女ゲームの世界と同じだと気付いてびっくらこいたけど!

これはあのマリアクソビッチに目にもの見せるチャーン!!!

どうしてくれよぅ?そうだ!まずはマリアクソのクソハーレム解体しよう!

今なら攻略対象アホ共達の事クソほど解るぞ!なんたってゲームもやって、攻略本まで見たからな!

前世の親友マジ感謝!!!

さっそく!そうと決まれば、そうだなぁ、まずは……リアンから行くか!

リアン!首洗って待っとけよ!!







「エリーのきみだわ」

「本当に今日もリアン様はお可愛らし」

「あぁ、ほんとうに、エリーちゃんにそっくりですわねぇ」

「イザベラ様と並んで歩く姿がまた見たいわぁ……」

「きっと無理よ……」

「かなしいですわねぇ、イザベラ様がおかわいそうで……」


数人の女子生徒達のヒソヒソ話が聞こえちゃった。

ヒソヒソ話をされてるのは何だか嫌だから。聞こえているという意味で手を振り、微笑んだ。


『エリーちゃん』それは女の子なら1度は手にする、お人形さん。

真っ白な肌に、大きな緑色の目、ふわふわのミルクティー色の髪の毛の少女の形をしたお人形さん。


僕の髪の毛は『エリーちゃん』茶色だし、女の子みたいに長くはない。瞳だって『エリーちゃん』より少し深い緑色、けど『エリーちゃん』は僕のおばぁ様の小さい時の姿を人形師が作りたいと言い作られたお人形さん。それが可愛いと瞬く間に広まりブームになった。

おばぁ様にそっくりなお母様。

瞳と髪色以外お母様にそっくりで、男にしては少しだけ小さな身長からか『エリーの君』と言われてる。


以前の僕なら彼女たちに手を振って微笑む、なんて事は絶対にしなかった。

僕は自分の容姿を嫌っていたから。

でも今は『エリーちゃん』に似ていて良かったと思ってるんだ。

だってそのおかげでマリアと出会えたから。


先生達の部屋、文化部の部室が有る建物と授業で使う教室を繋ぐ渡り廊下。

中庭に向かうために歩いていると、教材と山積みのノートを持って居る菫色の髪の女の子が歩いている。

僕が隣を通り過ぎようとしていると声をかけられた。


「ちょっとそこの方。重いし運びにくいのですが、運ぶのを手伝って下さいません?」


「えっ?僕に言ってるの?」


「貴方以外に誰に言っていると思ったんですの?あちらの方でお喋りをしているのは女子生徒ですし、貴方は男性の方なのに?」


高貴な雰囲気なのにキョトンと首を傾げる姿が可愛らしい。それにこの子、僕に荷物を持って欲しいって、男なんだからって……。

僕は見た目のせいで荷物なんか持つのを頼まれた事は無いし、逆に女子生徒達がリアン様には重いでしょうからって手伝いをしてくれた。僕だって男なのに、それが情けなかった。

マリアだって最初は『エリーちゃん』に似ている。って事が話したきっかけだったし。マリアにはこういう事で頼られたことなんてない……。


「聞いています?重いのですが?」


「あっ、ごめん!持つよ!」


「ありがとうございます。言語学の先生の教室までですがよろしいですか?」


「うん大丈夫だよ。」


受け取ったノートの山はそこまで重く感じなかった。

これなら教会の掃除の時に退かしたりする、銀や金でできた燭台やらの方が重い。

歩きながらそんな事を考える。


「ありがとうございます。ノートのついでに教材も持っていきます、と申し出たのは良かったのですが、とてもノートが重くて。」


「そうなんだ?」


「男性の方には重く感じませんのね。そんなに軽々持って。」


「えっ?うん。良かったら教材も持とうか?」


「嬉しいですが元々私が引き受けたことですから、全て持って頂くのは気が引けますわ……」


「じゃぁノートを数冊持って?後は僕が持つから。」


「……ありがとうございます。実はここまで持ってくるのに少し手が疲れていましたから、嬉しいです。紳士な方ですのね。」


「そんな事初めて言われたよ。皆僕にはノート持たせてもらったくれないから……。」


「どうしてですか?」


「えっ?……それはその…………僕がエリーちゃんに似てるから……。」


「エリーちゃん?どなたですか?」


「えっ?エリーちゃんってお人形さん知らない?」


「知っています。わたくしも小さい頃、お父様に頂き。今はさすがに遊ばなくなりましたが、飾って大切にしていますから。」


「エリーちゃんは僕の祖母がモデルなんだ。だから皆似てるっていうんだ。」


「……言われてみれば少し似ている気がしますが。貴方のお顔は男の方のお顔ですし。エリーちゃんより瞳の色だって濃い。髪の色もちがいますわ。」


「……そっ!そうだよね!」


違いを直ぐに分かってくれて、それに、男性の顔って……。


「でも、整った顔や。エリーちゃんの皆に好かれるような優しい雰囲気は、モデルがおばぁ様だからなのですね。素敵ですわ。……それに。」


「それに?」


「辛い時、いつも一緒に居てくれるお人形はたいせつですわ。でも、お人形は喋らないし、考えないし、悩まない。動かない。ノートを快く引き受けてくれるあなたみたいに、優しい心はありませんわ。人形の優しさとはちがいます。貴方は似ていても女の子のお人形ではなく。1人の優しい男性ですもの。」


「……僕、初対面でちゃんと男って認識してもらっまたの初めてかも。」


「そうなのですか?きっと勘違いですわ。だってあなたとてもカッコイイもの。エリーちゃんを貴方が気にしすぎていたせいでそう思ってしまっただけでしょう。」


「エリーちゃんを気にしすぎていた、かぁ。僕、エリーちゃんに似てる事が嬉しいって最近思ってたんだ。」


「あら、それはごめんなさい。全く似てない事は無いから……」


「うんん、それはね。好きな女の子にいつでも傍に居てくれる僕は彼女が辛い時傍に居てくれたエリーちゃんと一緒でだけど僕には心があって男として恰好いいって言って貰えたから。その子との出会いも。彼女が僕のことエリーちゃんって呼んだからで、だから悪くないかなって。思ってたんだ。」


「そうなんですのね。確かに頼りになって貴方が傍に居てくれるのはその女性にとって嬉しいことなんでしょうね。特にエリーちゃんに思い入れのある女性なら。でもそれって……」


「それって?」


「エリーちゃんに思い入れの無い女性なんて居ないから。特別エリーちゃんにこだわる必要ないですし。貴方が男性なのは当たり前の事です。」


「……確かに、それはそうだね。僕、あんなにエリーちゃんに似てる事が嫌だったのに。それを受け入れちゃってたし。彼女も結局はエリーちゃんの様な僕が、好きなんだ……。彼女との日々は僕って新しいエリーちゃんと彼女が過ごした日々なのかなぁ、彼女が無くしちゃった。愛しのエリーちゃん人形みたいに……。あんなに、色々あったのに。僕は彼女のお人形さんと同じ扱いなのかなぁ。」


「それは、私(わたくし)にはなんとも言えませんわ……。」


「僕、やっぱり。エリーちゃんが嫌いだ。一瞬でも大好きなおばぁ様を嫌に思ったことも。散々お人形さん扱いを受けた事も。……僕本当はそうだよ。嫌いなんだ。」


マリアは人として扱ってくれて。エリーちゃんを好きにならせてくれたけど。

なんでエリーちゃんを好きになろうって、思ったんだろう。だって、今まで。エリーちゃんで苦しめられた過去は変わらないのに。


「ごめんなさい。わたくしが言ったこと気に触ったかしら……。貴方には貴方の考えが有るのに、差し出がましいことを言ってしまったわ。」


「そんな事ない!僕とっても嬉しいんだ!だって、僕本当は我慢して、嫌な事を納得してしまっていただけだって気づいたから!貴女にお人形さんじゃないって、言われて。動く嬉しいんだ。」


「……そっそうなんですね。なら、そんなに喜んでいただけると照れますが、良かったです。」


ふんわり微笑む女の子。可愛くて天使ってこんな感じなのかなぁ……って!

何だか顔が熱いなぁ。


「そろそろ行きましょう?」


彼女とノート数冊と教材を交換して再び歩き出す。

そんなに重くない。

これなら教会でお手伝いで磨く大きな装飾品の方が重い。

ノートなんて初めて持たせてもらったけど、女の子にはこれが重いんだ……。


「ノートだけでしたら、いつも何とか持って行けるのですが。やはり教材も入るとダメでしたわね。貴方が手伝って下さり助かりますわ。」


「君はいつもノートを持っていってるの?」


美しい所作に気品を感じるし、規定を元にオーダーメイドで作ると制服も品が良くて多分高級布を使ってるみたいだし。多分、彼女位の高い貴族みたいだけど?


「ええ、私恥ずかしながらお友達もおりませんし。……婚約者はいるのですが……。」


「どうかしたの?」


「いえ、なんでもございませんわ。」


彼女は微笑むけど。何処か悲しそう。


「何か悩みがあるなら聞くよ?」


「実は……。婚約者は元々私(わたくし)と一緒にいて下さらない方ですが。他の女性の方に惚れ込んでしまって、彼女とずっと一緒にいらして。何度もプレゼントまで差し上げてるのです。私(わたくし)には幼い頃に1度だけ下さっただけですのに……。これから夫婦になるのに、結婚前から他の女性と……」


「そんな!」


「お二人に学園の中でも、そういう仲だと見えない訳は無いので。世間体も有りますし、距離を置いてくださいと申し上げたのですが……」


「そしたら別れてくれたの?」


「女性の方は、彼が誰と居ようが彼の勝手だと……。彼の自由を奪わないでと言ってはなれてくれません。」


悲しそうに俯く彼女。


「それってつまり、愛されない私は耐えろと言う事ですわよね……。」


「酷い!」


「仕方がないのです。愛されていないのですもの。だって婚約者にハッキリ。愛していない、視界に入るのも嫌だと。彼女とずっと一緒に居ると言われてしまいましたから……。」


俯く彼女。会った事無い人だけど。お腹のそこから怒りが湧いてきて。心底その2人は醜いと思う。


「婚約者にも、はっきり視界にも入れたく無いくらい嫌いだと言われてしまいましたから。」


俯く彼女の顔は見えない。

ただ声が少し悲しそうだ。


「そんなの酷い!」


肩を震わせる彼女を見て彼女の婚約者と女性がとても憎いという気持ちが溢れてくる。

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あの女(ヒロイン)絶許。 数野衣千 @kazuno_iti

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