邪風景
安良巻祐介
白けたような昼下がり。
潰れた薬局の店頭に立っていたはずの、頭の大きい子供の張り子が、遠目に、ゆっくりと坂を上がっていく。
汚れてへこみができた顔は、一歩進むたびにぐらぐら揺れているせいもあってか、表情がよくわからない。
それは、坂の上の学校を目指している。
今は昼休みだろうか。見上げた校舎からは、きれぎれに声が聞こえてくる。
あれが辿りついたら、あの学校は…。
校内放送でどんなことが流されるか、想像しただけでも、厭な気持になる。
しかし、わかっていても、どうにもできない。
どうせここからでは走っても間に合わないし、そもそも間に合ったところで、こちらが怖い目に逢うだけだろう。
心の中で手を合わせ、それ以上見ないようにして、僕は、急いでその場を離れた。
邪風景 安良巻祐介 @aramaki88
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます