第2話 希望そして絶望


高校合格発表の次の日ふと窓の外をみると、他の友達と歩いている柚希の姿があった。

私は柚希に声をかけようと窓を開けると、柚希の喋り声が聞こえたので、思わず隠れつつ聞き耳を立ててしまった。

その内容で私はある意味では救われたのかもしれない、この世界は絶望しかないということに気づけたのだから。

「柚希ってさなんで絶のことそんなに気にかけてるの?」

小学校の頃の共通の友達だろうその子は軽い口調で質問をしていた。

「単純に付き合いが長いからかな、もうやめられないというかなんというかそんな感じ」

柚希はその友達よりも真剣な口調だった。

ここで窓を閉めておけば幸せだったかもしれない。

「じゃあさ付き合いの長さとか関係なく、ぶっちゃけ絶のことどう思ってるの?」

先ほどと変わらない、軽い感じでの質問だった。

「私が絶をどう思ってるか? 一回本気で友達やめようと思ったこともあったし、メンタル弱いしいなくなっても大丈夫そんな感じかな?」

ここで私は窓を閉じてしまった、私は昔から人の私に対する悪い意見を聞くと、気分が悪くなりなんのために生きてるのだろう、早く死にたいそんな感情が多々あった。

ただそれまでの意見は、全て他人近くても親戚ぐらいの人たちだったので本気で死のうと思ったことはなかった。

今回は家族以外で唯一信頼している、柚希に言われてしまったので大分ダメージを受けてしまった。

今のことを忘れようとリビングでテレビでも見ようかと、向かうとここでもタイミングが悪く、姉からの悪い意見を聞いてしまった。

「私、絶のクッソどうでもいい話真剣に聞いてあげてるからさ、お金頂戴」

「だめ姉妹になった時点で、そういうこともやるのが姉妹なの」

優しい姉も心の中では、私のことをいらないやつだと思ってる。

同じ日に信頼している2人から、悪い意見をを聞いてしまった私は、気にしなければいい話なのに、やはりこれも性格なのだろう、死のうそう決意した。


家の2階に上げりベランダに出る、そのまま前に進み柵に足をかけたタイミングで、柚希の声が聞こえた。

「待って絶! 何してるの」

柚希は珍しく怒っていた、柚希自身がいなくなってもいいと言ったのにそんな風に思いながら、もう片方の足を持ち上げる。

「さようなら、柚希」

一言そう言って私は飛び降りた。

その時だった、柚希が私手を掴んで持ち上げようとしていた。

「なんで! 柚希が私のこといなくなってもいいって言うから、死のうって決意したのになんで止めるの」

私も珍しく声を大きく出してしまった。

私の手を力いっぱい持ち上げてる柚希の顔には、涙垂れている。

「聞いてたの? 確かにいなくなってもいいとは言った、けど私はその後にこうも言った、ただねそれは友達としての絶であって、恋人としての絶になってくれたらいいなって意味もあるんだよ」

柚希の顔には怒りと悲しいの2つの感情が入っているのが伝わってくる。

「だからね絶、私は恋人としてあなたの悪い部分も全てまとめて、あなたに希望を与えたいと思ってるの!」

それを聞いて私はもう少しだけ生きたいと思えた気がした。


柚希に引っ張り上げられ、私と柚希は私の部屋に一緒に行った。

「絶、私ねあなたが不登校になる前は、どっちかというと今のあなたみたいな性格だったの」

ただ静かだった、そんな印象なので少し驚いてしまう。

「ただねあなたが、不登校になってからあなたどんどんこの世界に絶望してたでしょ? それを見て私が逆に、この世界は希望で満ちているって教えようと思って頑張ったんだよ」

これは本当に初耳だった。

「ありがとう柚希、今の言葉で少しだけだけど希望もあるんじゃないのかなって思えた気がしたよ」

先ほどまで泣いていた顔を、笑顔に変えている柚希が、それじゃあ言わんばかりにこちらを見ていた

「絶、私あなたのことが好きなの女の子同士でおかしいかもしれないけど、もしよかったら私の彼女になってほしい」

そう言われた私は勢いで、柚希の唇に私の唇を重ねていた。

柚希の短い髪を触りながら、柚希がかけている眼鏡を取りそのまま続けた。

「これが私の気持ち、私も好きだよ柚希」

そう言われた柚希は、照れてしまったのか顔をそらしてしまった。


「絶、これでもう死にたいとか思わないよね?」

「うん多分あと1週間ぐらいは大丈夫だと思うよ」

「1週間!? じゃあ私がずっと絶に希望を与えてたら?」

「それならずっと死にたいなんて思わないよ」

2人で顔を見ながら思わずふふっと笑いが出てしまう。

こんな日々が永遠に続けば幸せになれる気がする。

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