第3章:レウニール

 レウニールの館にシュバルツバルトの姿があった。

「ぐがが、何の用だ?」

「レウ君、約束は果たされるためにある。そうは思わないか?」

 当然、実体は人界であり、ここに浮かぶはただの幻影。

「何の話だ?」

「今、僕はミロワールとチェスをしているよ」

「……そう、か」

 レウニールの巨体がかすかに揺らぐ。

「とても楽しい時間だ。オリジナルでないのが残念でならない」

「対価は?」

「箱舟への鍵。どうやら仕込みは僕のオリジナルらしい」

「ぐがが、死んでも喰えん男だな、シュバルツは」

 レウニールはひとしきり笑い、

「僕と君にとっては素晴らしいサプライズ、であると同時に――」

 怪物ゆえ読み取り辛いが真顔と成る。

「――試練でもある、か。ぐが、案ずるな、我は揺らがず泰然と在るのみ」

「ふふ、意外と大変だよ。僕はさっきから、緩みっぱなしだ」

「情けない。それでも新人類か」

「僕は君こそ心配だよ。繊細で脆く、イヴリースへの対応も含めて愛に弱すぎる。まあ、彼相手は上手く振舞っているようだけど」

 いたずらっぽく微笑むシュバルツバルトの虚像めがけて亀裂が走る。

「ほざけ」

「流されるなよ。僕らは与えるために残っているわけじゃない。今回はシュバルツバルトのエラーが原因だし、手を貸さねばそれこそ滅ぶから許されているが」

「元はと言えば貴様の問題であろうが」

「ソフトだからプロメ君だよ。まあ、責任を擦り付けても仕方がない。演算装置に反映されていない部分で人は成長した、いや、し過ぎてしまった。安定に欠ける黎明期を乗り越えるためのバランサーが、バランスを破壊するって言うんだ」

「ぐがが、システムの問題だな」

「シュバルツバルトの演算が及ばぬ成長、今の時代にとってはまさに悪夢だが、明日を想えば決して悪い結果ではない。其処が何とも言えぬところだね」

「……演算を超えた領域、本当にあるのか、そんなものが」

「あることを祈るしかない。だって無ければ、早晩滅ぶだけだから」

 そう言ってシュバルツバルトの幻影は消える。

 残されし永き時を生きた怪物は――

「始まりであり終わりの手前、分岐点が絡み合う特異点。それが今、か。ぐがが、あれほど待ち望んだ時でありながら、我は彼女に見せる姿を持たぬ」

 諦めと倦怠に満ちた己が生涯を振り返り、顔を歪めた。

 因果は巡り、交錯する。

「……アポロンよ、貴様は彼らに何を見た? 旧人類の如し彼らに、どんな可能性を見たと言う? 何故、欠けに塗れた種族を、世界を創った?」

 レウニールはこの世界のために捨て石と成った最強の戦士を想う。それに付き従い、おそらくは散ったであろう同胞たちを想う。

 未だレウニールは、この世界が犠牲に見合うとは思えていない。

「我は、どうすべきだ?」

 揺蕩い続けた男は訪れし特異点に何を想うか。


     〇


 星が燃えていた。天を覆うは銀色の虚無。フィールドを張っているため、彼らが彼らのまま地に降りてくることはないが、それとていずれは尽きる。

 そうなればまさに手も足も出ない。幾人かを除いて。

『行かないで、私を一人にしないで!』

『誰かがやらなきゃいかんだろ。このままじゃ全滅、絶滅だ。俺たちの文明もめでたく連中に収集され、誰が見るかもわからん図書館に寄贈されるだけ。それじゃあよ、あまりにも先人に申し訳が立たないだろ。だから生きろ、イヴ』

『嫌よ! ずっと、ずっと一緒だって』

『俺が残る。俺ならセブンスフィアが無くとも多少は渡り合える』

『アポロン、駄目さ。お前は皆と一緒に逃げるんだ。それは最強の戦士であり、始まりの炎を継ぐお前の役割だろ? まあこういうのは二番目に任せとけって』

『だが――』

『だがもへちまもあるかよ! レウ、皆を、イヴを頼む』

『……俺には、何も出来ない。何も。くだらない発明ばかりで』

『そうかな? 俺はさ、お前らが正しかったんだと思うぜ。俺たちは間違えたんだ。絶対の秩序、完全なる世界、不死、永劫、安寧、連中は俺たちが完成したと思ったんじゃねえか? もう変化は、発展はないって、だから、こうなった』

『……何を?』

『俺たちは間違えた。そう考えるとしっくりくる。で、その急先鋒だった俺は、やはり最初に終わっとくべきなんだ。次がそうじゃねえことを、祈る!』

 そして、男は一筋の流星と化し星を覆う怪物に向かっていく。幾度も煌めき、世界が轟き、多くの時間を稼いだ後、墜ちる。

 絶叫、絶望、憎悪、憤怒、ありとあらゆる感情が渦巻き――

「……女々しい夢だ」

 シン・イヴリースの欠片を持つ男、加納 恭爾は目を覚ます。何度も見せられた悪夢、絶望が世界を覆いつくし、一つの文明が滅ぶさま。

 彼女たちが逃げ延びられたのは奇跡に等しい。

 実際、彼女たち以外の船団は全て、収集されたから。

「まあ、警告はありがたく受け取っておこう。私が生き延びるために、もっと力が要る、ということだ。危機を回避し、より永く絶望を咀嚼するために」

 加納の顔が愉悦に歪む。

「クソみてえな貌してんな、シン」

「ふふ、ニケか。そんなに酷い顔をしていたかな?」

「ああ。で、俺は回復して随分経ってるんだが、何故俺を使わねえ?」

「次元操作は重力制御よりも低燃費だが、それでもお前を通すとなれば馬鹿にならない力が要る。そして、何度も言っているが私の目的は彼らを絶滅させることではなく、私の完成まで安定供給をしてもらうことにある、絶望をね」

「だから俺は要らねえってか?」

「オーケンフィールドが用済みになったら好きなだけ戦うと良い。それまでは待機、だ。お前は無駄に殺し過ぎる。効率的に絶望を摂取するためにはある程度の人口を保たねばならない。その辺りのさじ加減が難しく、ゆえに面白い」

 加納は立ち上がる。イヴリースの見せる夢、彼はしっかりと理解していた。あれは戦ってどうにかなる相手ではない、と。ゆえに必要なのは逃げ延びる力。そのための究極、目指すべき方向性は定まっている。

 全ての絶望を喰らった後、宇宙に唯一人と成った時が己の寿命。それで何の問題もない。喰らうべきモノのない世界になど興味はないから。

 彼は理解していたのだ。最悪の形で、それは繋がる。


     〇


『おいおい、これは、嫌な予感しかしねえぞ』

 彼らがタルタロスと呼んでいた特大の『ゲート』、其処をくぐって魔界に至るつもりが、彼らの目の前には紅き召喚陣が浮かんでいた。

 ゼンにおつかいを頼む時と同じ紋様。

「……一人用じゃない。出力が、上がっている」

 ゼンはそれを見て顔を歪める。

「と、とうとう私、魔界に。ふふ、エルの民が、何て背徳的」

 ライラは魔界に至ることだけで興奮していた。

「ふぅむ、どうにも先回りされておるのぉ。先回りするのは好きなんじゃが、されるのは嫌いでの。あ、これ内緒じゃからな。わしほんと殺されちゃう」

 トリスはまた好き放題言っている。

「また、魔界か」

 シャーロットはトラウマになっているのか、若干及び腰であった。何しろ、六大魔王に遭遇し、大獄に叩き込まれ、脱出したらシン・イヴリースと遭遇し、六大魔王に囲まれるという経験を積んでいる。友人もそこで亡くした。

 平然としている方がおかしいだろう。

『まあでもよ、選択肢はねえぜ、相棒』

「ああ、行くぞ!」

 ゼンは誰よりも先に、踏み込む。

 いつもの感覚、捻じれ、崩れ、歪み、そして至る。

「久しぶりだな、クソオーク」

「ああ」

「他の連中は?」

「すぐに来る」

 そう言った瞬間、ゼンの後ろに幾人も現れる。

 それを見てレウニールの館を守るメイド、もといハウスキーパーであるフェネクスは顔を歪めた。基本的に彼女は人族が嫌いである。神族はもっと嫌いであった。

「うわ、不死鳥なんて初めて見ました。絶滅したっておばさまが」

「絶滅させられたんだよ、テメエら神族にな。犯すぞクソアマ!」

「ひぃ!? 何て下品な。聞いた? シャロ。怖いわね」

「……私を巻き込まないでくれたまえよ」

 本人はすっかり友達気分であるライラはシャーロットの影に隠れた。

「マスターがお待ちだ。あと、姿形について触れたら殺すぞ。いいな、ファッキンオーク。テメエは口に糸縫い付けとけ。あ、でもしゃべったら蹴り飛ばす」

「わかった」

「ふん、殊勝だな。おら、ついて来い」

『ミィちゃんおらんの? オイラぷち修羅場が見たいなぁって』

「マスターが買い物に行かせた。ま、あと半年は戻らねえだろ。ケケケ、いい気味だぜ。あ、ちなみに目玉、テメエもしゃべるなよ。無だ、それ以外は潰す」

『へい姉さん』

「ゼン、ミィって誰だい?」

「ニャ族という魔族だ。色々あってレウニールの眷属になっている」

「ふぅん、仲良いのかい?」

「たぶん、それなりには良いと思う。嫌われてはないんじゃないか?」

「ちなみに男? それとも女?」

「雌だ」

「なるほどね。いやー、君は交友範囲が実に広いね」

 何か棘のある物言いであったが、肝心のゼンに遠回りは言い方は何の効力も発揮しない。「狭い方だと思うぞ」と謎の抗弁をして火に油を注ぐ。

 ラブコメ適正◎、である。

 不機嫌極まるフェネクスが扉を開ける。その理由が――

「あ」

 扉を開けた瞬間、理解こそ出来なかったがゼンは驚きに言葉をこぼしてしまう。

 刹那――

「わかったっつったよな?」

 フェネクスの蹴りがゼンの顔面を穿ち無言で吹き飛ぶ哀れなるオーク。

 無様に横たわるゼン。ギゾーはきっちり沈黙を保つ。

「ぐが、久方ぶりだな、トリスメギストス」

「ご無沙汰しております。そのお姿は、それこそあの日以来でしょうか」

「ぐがが、黙っていろ」

「ハッ」

 普段、異形の怪物が鎮座する華美な玉座には、ただ一人の男が座っていた。仕立ての良いスーツを着て、栗色の髪を弄る青年が王の如し振舞いを取る。

「初めましてだな、有象無象ども」

「…………」

 ライラ、即失神。姿かたちに意味はない。彼女の眼は彼の実像を映し、その強さを前に失神と失禁のダブルコンボをかましていた。

「お初にお目にかかる。私はシャーロット・テイラーだ」

 対してシャーロットは存外平静であった。ライラのような眼がない、という理由もあるが、それなりに場数を積んだ彼女に実力が透けぬ理由はない。

 同様に怖がるべきなのだろうが。

「良いスーツだね。ふっ、私の眼は誤魔化せないよ。オートクチュール、それも我が祖国の仕立てにそっくりだ。素晴らしい仕事だね。私の好きなシルエットだ」

「ぐがががが! 違いの分かる小娘だな」

「お褒め頂き光栄だね、偉大なる魔王閣下。笑い方も個性的でチャーミングだ」

「このバッ、おま、殺すぞクソアマ!」

 フェネクス、ビビり倒すと同時にぶちぎれる。器用であるがテンパっているだけであった。ちなみにギゾー、すでに明鏡止水の境地に達している。

 さすがのトリスも絶句。

 だが――

「ぐがが、そうか、知らずとも、本当に、ぐが、嘘をつかぬな」

「何か言ったかい?」

「いや、何も。それで、用向きは何だ?」

「鍵を貸して頂きたい。私の友人に必要らしくてね。何故必要なのか、等々説明は受けていないのだが、藁にもすがる思い、というやつだ」

「言葉足らずだな、トリス」

「ハ、ハッ! 説明の必要はないかと、思いまして」

「対価とするつもりの者にもか? 我はそう思わぬがな」

「申し訳ございません」

 レウニールと思しき青年は静かに玉座を立つ。

 びくりとするのはトリスとフェネクス。

「我がしもべよ、我が前に立て」

「……ハッ」

 ゼンは立ち上がり、レウニールの前に立った。全身総毛だつ、恐ろしいほどの戦力差。本能が逃走を告げている。何故シャーロットが平然としているのか理解できない。種族の違いか、それとも何か別の理由があるのか。

「貴様の前には二つの道がある。一つは鍵を用い、箱庭に至る道よ。原初の獣を打ち倒し、喰らい、それを無限に繰り返す餓鬼道。死ぬこともあろう。満ち満ちた己に詰め込む作業は決して楽でもない。だが、魔族の設計者として保証しよう。それで強くなる。遅々とした歩みであるが、必ず強さは増す」

「……迷う理由もない。俺に鍵を――」

「もう一つは、調律である」

 その言葉にトリスは目を剥く。恐々と、それでもトリスはレウニールを睨む。

 それは明らかに、行き過ぎた対応であるから。

「一日、我に寄越せばそうさな、九割ほどの確率で貴様を強くしてやることが出来る。貴様の素体であっても六大魔王に比肩し、今のイヴリースであれば容易く屠れる力、だ。失敗すれば力を失うが、それとて死ぬわけではない」

「レウニール様!」

「フェネクス」

 抗弁しようとしたトリスをフェネクスが押さえ込む。「ぐぬ」とうめくトリスを足蹴にフェネクスもまた複雑な表情ではあった。

 この取引は、フェアではない。

「やはり、迷う理由はない」

「ほう」

「鍵をくれ。俺には時間がない」

 レウニールは楽し気に微笑んだ。

「ぐがっ、ならばなおの事、調律の方が良いのではないか? リスク最小、費用対効果も時間も、この方法が最適解であろう? よぉく考えた方が良い。どれほど上手くいこうと、箱庭では精々魔人中位から上位の足元程度よ」

「何の選択肢もないなら迷わず調律を選ぶ。だが、確実に強くなる道があるなら、一割の失敗を負う気はない。俺にとっては力を失うリスクの方が大きい」

「ぐが、頭の良い選択ではないぞぉ」

「何よりも、俺は二度と蜘蛛の糸を掴む気は、無いッ!」

 ゼンは真っ直ぐに、迷うことなく言い切った。

 それはかつて、安易なる逃げ道を、シン・イヴリースの甘い罠に引っ掛かり、多くを殺し、奪った男の矜持。

「地獄だぞ。強くなった先も含めて。それでも茨の道を、別の道があるにもかかわらず、掴むというのか? 合理的ではない。期待値的にありえない」

「難しい言葉を言われても困る。俺は、知っての通り馬鹿だぞ」

 揺らがず、堂々と立つ姿にレウニールは目を細めた。何から何まで基準に満たない男が、何故か己を圧している。その事実に、彼は笑い出しそうであった。

「……トリス、鍵をくれてや――」

 加えて――

「人を、試すな!」

 レウニールの、シン・レウニールの頬をぶつ、シャーロット。ありえない暴挙であった。あってはならぬことであろう。

「悪魔のささやきだ。傷を抉る行為で、卑怯極まるやり口だろう。私は嫌いだ。紳士的ではない。取引とはフェアに行われるべきだ。甘言をちらつかせるのは詐欺師の手口。王を騙るなら襟を正せ、レウニール!」

 ぶたれた男もまた茫然としていた。

「……ふむ、これ、客観的に私、死んだかな」

「ば、馬鹿野郎! シャーロット! お前が怒ることなんてないだろうに」

「いやまあ、その通りなんだがね、考える前に手が出た。あっはっは」

 ゼンの言葉に応じるシャーロットはあっけらかんとしていた。

「さあ、好きにするがいい。私は逃げも隠れもせんよ」

 威風堂々、臆することなくシャーロットは仁王立つ。

「調律はある。ですが、貴方方がそれをこの世界に施すことはありますまい。何故、このような試しをされたのかはわかりませぬが、心穏やかに――」

「ぐががががが、ぐが、本当に、いつぶりであろうな、人にぶたれるなど。なるほど、これは痛い。実に、痛いモノであるな。そして痛快でもある」

 レウニールはシャーロットの前に立つ。

「久方ぶりの対価、貴様の時間と取引させてもらう。よいな?」

「時間によるとも。私は安くないよ。何しろスーパースタァでね」

「ぐがが、口の減らぬ女だ。ゼン、この女は人質である。貴様が戻らねばこの女は永劫我がもとでこき使ってくれよう。なに、ただの余興。他意はない」

「彼女を巻き込むわけには――」

「それでいい。素晴らしい取引だ」

 シャーロットは手を差し出す。レウニールは苦笑してそれを握り返した。

 本人の承諾なしに、交渉が成立した瞬間である。

「必ず戻ってくるだろう? スーパーなお姫様が囚われているのだよ、君」

「……何なんだ、スーパーなお姫さまって」

「あっはっは、私も知らんさ。たまには頼りたまえよ、私たちは仲間だろ?」

 ゼンは、シャーロットの笑みを見て、相好を崩す。

 一人ではない。一人にはさせない。そう言われたような気がしたから。

「フェネクスを貸す。これで思惑通りであろう?」

「え?」

「ご明察にございます」

「さっさとそこの気絶している女を連れてあれの元へ行け。あれの力なくば戦いになど間に合わんぞ。あれの歪なるバランスが成立した時点で、巻き返すのは不可能。待っているのはあの男を除く、全ての滅び、だ」

「承知。寛大な対応、感謝いたしまする」

「貴様に感謝される謂れはない。それに、全ての指摘が正しかろう? 我があれに調律を施すわけがない。あくまで言葉遊びよ。咎められるもまた、遊び」

 レウニールはトリスの前で手を差し出す。

 恭しくトリスはシュバルツバルトの鍵を差し出した。

「戦い、喰らえ。それ以外の選択肢はない。自らが選択した道である」

「あ、ああ」

「レウニール様、私は――」

「原初の獣は生易しくない。死ぬ気でやれ。死なねば死にはせぬ」

 何を当たり前のことを、とゼンが思った瞬間、レウニールの鍵とシュバルツバルトの鍵が融合し、一筋の光が生まれた。

 それと同時にゼンとフェネクスの姿が消えていた。

「さて、ぐがが、どうこき使ってくれようか」

「どんとこい。私はメイドの役もこなしたことがある。自信あり、さ」

「ぐがが。トリス、疾く失せろ。其処の汚物と共にな」

「しょ、承知!」

 すたこらさっさとライラを担いでこの場から離脱するトリスメギストス。

 残されたのはレウニールとシャーロット。

「まずは、暇つぶしにチェスでも指すか」

「……ん? チェス?」

「自信なし、か?」

「ふはァ! 英国のチェスモンスター、このシャーロット・テーラーに自信がない、と!? ふっふっふ、ありまくりだとも。私の知るチェスであれば、ね」

「貴様らの世界から来た文化だ。異世界召喚とはかくも面白い。まあ、我も王なれば演算能力に大きな開きがあるのも事実。クイーンでも抜いてやろうか?」

「結構! 吠え面かかせてみせよう」

「ぐがが、こちらのセリフである」

 何故か盤を挟み、レウニール対シャーロットの熱き戦いが始まる。

 魔王対チェスモンスター、戦いの行方は如何に。

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