異世界に転生したけど酸素なくて死んだ

やまをのぶを

第0話 酸素がなくて死んだ

目が覚めるとそこに音は無かった。

一筋の降り注ぐ光と一人の佇む少女、友達ではない。それどころか暁町の人間ではないだろう、今をときめくアイドルとかそんな感じ。


静寂を破るように僕は口を開く。だが長く眠っていたせいなのか思うように声がでなかった。

なんとか発した小さな音は、一切の反響も起こさす消えていく。それでも彼女の耳には届いたようで、彼女はゆっくりとこちらを見つめる。


「目覚めたようですね、谷垣たにがき きよしくん」


そう言ってやさしく微笑む。なんだか恥ずかしくて僕は思わず彼女から視線を外した。


「前世の記憶はございますか?」


……前世? 思いもよらない単語に僕はハッと彼女を見つめる。


「私の想定通りならば死ぬ直前の記憶はないはずですが、それよりも前の日常の記憶に異常はない。違いますか?」


たしかにさっきまで何をしていたのか思い出せない。


「百聞は一見にしかずとも言いますし、さっそく転生させますね」


「さっきから何を言って……」


やっと言葉を発した刹那、彼女に降り注いでいた光が消え何も見えなくなった。





「眩しい……」


目が覚めるとそこには背の高い木で囲まれていた。森だろうか、この前、飛行機から眺めた森も下から眺めるとこんな感じなのだろうか。


そんなことよりもさっきの子は何だ? 夢か? 転生? 飛行機? ……不時着?


ハッと辺りを見渡す、飛行機は無い。


「そりゃそうだ、飛行機に乗ったのは先月」


乾いた笑がこみ上げて来る、これからどうすればいいんだ。それになんだか頭が痛い、体も熱い。何度か咳き込むと、のどからすっぱい液体があふれ出す。

意識が朦朧として全身のダルさから僕は立っていられず思わずそこに膝をつく。


そこで意識を失い

僕はたぶん2度目の死を迎えた。

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