第28話 デビューの2011年にやったこと。単行本1、短編寄稿1、小説連載1、連載マンガ原作1。

前回書いたようにデビューした年に講談社から2タイトルの刊行も決まっていたので、この勢いで1年目で3タイトル刊行! と意気込んだのですが、結局なんだかんだと時間がかかって講談社からの2タイトルは翌年にまわってしまいました。


福ミスの受賞者は例年「ジャーロ」という光文社のミステリ専門誌に短篇を寄稿することになっていると前の年の受賞者の方に聞いていたので、光文社から連絡をもらう前に短篇を3本送りました。後でなんとなくわかったのですが、受賞者が「ジャーロ」に寄稿するというのはたまたまだったみたいです。でも結果的に3本のうちの1本を非常に気に入っていただいて掲載となりました。さらに長篇にして、刊行しましょうというお話までいただいて大変ありがたかったです。まあ、その後地獄になるのですが……


その短篇は『預り地蔵』というあやかしミステリみたいなお話です。主人公の故郷の村には『預り地蔵』という地蔵さんがあって、忘れたいことを預けることができます。ただし、いつか地蔵さんが記憶を返しに来るのです。それがいつかは誰にもわからない。ある夜、主人公の住むマンションに地蔵さんが記憶を返しに来るところから話は始まります。預けた記憶は5つで、ひとつひとつ返してもらううちに、主人公は……という話で、ひとつの記憶がひとつの怪異譚として成立しており、最後に全部まとまると見えてくる怪異があります。「読んでみたい!」という方がいるようならカクヨムに投稿します。短篇なので簡単に読めると思います。


ネット媒体での小説連載『工藤伸治のセキュリティ事件簿』と、連載マンガ『オーブンレンジは振り向かない』の原作は、さんざん最終候補に残った後だったので、受賞まで待ちきれなくて知り合いに御用聞きをした成果です。やってみるものですね。意外なところで採用してもらえました。特にマンガは、名前からしておかしな話をよくぞOKしてくれたと感謝に堪えません。のちに単行本として刊行されましたが、1話から3話まで無料のPDFで配布しています。


 オーブンレンジは振り向かない

 http://www.byakuya-shobo.co.jp/hj/oven/index.html


第1話の原作を書き上げた時に、最終の3話の原作も書き上げました。とにかくありえないどんでん返しの連続なので、あらかじめ編集の方とマンガ家の方にどういうオチになるか知っておいてもらった方がよいと思ったからです。


業界のことなどわからずに動いた結果、いろいろ次につながったと思います。もちろん、全てうまくいったわけではなく、企画が通らなかったことの方が全体としては多いですし、編集者とのおつきあいもよいことばかりではありません。


とある編集者に、クリスマスイブの打合せをすっぽかされたことは忘れられません。クリスマスイブの夕方に打合せしかも社内でってどういうこと? と思って、事前に何度も確認したにもかかわらずです。

当日、編集部に誰もいません。警備員のみなさんに同情されるありさまです。連絡しても返事はなし。怒ってるとか、恨んでいるのではなく、「当たり前に約束を忘れる人って本当にいるんだ」という驚きでした。もちろん、それまでの社会経験で約束を忘れる人がいるというのはわかっていましたが、クリスマスイブで事前に何度も確認したので感動すら覚えました。こんなことで怒ったり気分を害しているようでは編集者とはつきあえないのだろうなあ、と肝に銘じました。

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