第20話 商業媒体に書評を書けばお金になるのに、なぜカクヨムに書評を書くの?
新年最初の仕事は角川新書の『超限戦』の書評だったわけですが、いまだに書評のお仕事の意味がわかりません。
20年前の戦略書が日本と世界の「今」を解き明かしてくれる――『超限戦』 https://kadobun.jp/reviews/5cimwltgqmko.html
編集部とおつきあいがあってというのが基本で、そこから「書評も書いてるんです」とか売り込むんですかね? 小説ならプロットや書き上げた小説を送る方法ありますけど、書き上げた書評を送りつけるってやらなさそう。でもそれで元がとれるとは思えないんですよ。
私はサイバー関係の小説や専門書の書評をちょくちょく書いています。だいたい最初は、編集者にその本の重要性の説明から始めます。幸か不幸か多くの編集者はこの分野で大事な本がわかっているわけではないのです。
中には企画から携わることもあります。
たとえば原書房から刊行している伊東寛さんの『サイバー戦争論 ナショナルセキュリティの現在』です。とある呑み会で伊東さんが、本を出版したいと考えていて、知り合いの編集者に相談したところどうもうまくいかない。クラウゼヴィッツ(戦略論の世界の超有名人)を知らない編集者に説明しても全然伝わらない、というぼやいてらしたので、クラウゼヴィッツをわかっててサイバーにも関心ある編集者を紹介しました。編集者へ企画の説明し、最初の打合せにも立ち会いました。話はとんとん拍子に進んで刊行に刊行され、重版もかかりました。巻末に「紹介の労をとってくださった一田さんには……」と書いてもらえるかと期待したんですが、残念ながらなかったです。伊東さんの本は大変貴重なものだったので、微力ながらもお役に立てればと書評も書いて私の知己の編集部に持ち込んで掲載してもらいました。書評1本の原稿料がこの本に関する私の収入の全てで、確か1万円か2万円。
今回の『超限戦』は数年前に角川新書の私の担当の方に、『超限戦』がいかに重要で復刊すべきものかと力説しました。その甲斐あって担当の方も調査し、出版を検討することになりました。「刊行10年後に10周年版があって追記があります」とか私も情報提供しました。
担当の方が調査した結果、過去に他の出版社も復刊を検討したものの著者のひとりが中国共産党のかなり上のポジションになっており、容易にアプローチできなくて断念していたということがわかりました。ふつうならそこで諦めるのですが、凄腕の編集者は違います。***経由(営業秘密)で見事にコンタクトに成功し、刊行にこぎ着けたのです。それでも契約などで時間がかり、最初の提案から数年後の刊行になりました。凄腕の編集者の方は気配りもすごくて、刊行日程が確定した段階で私に連絡をくれて、「カドブンでレビューをお願いします」と言ってくれました!
昔の単行本や文庫本には「解説」みたいなのがあって、それを書評家の方が書いてたりします。あれってちゃんと印税もらえるんですね。なので結構いい収入になったらしいです。それだと企画から関係してもよさそうな気がしますが、最近はそういうものはほとんどないので書評だけだとそんな収入にはならなそう。新聞や紙の雑誌と原稿料はもうちょと多そう。原稿の分量にもよりますけど、1本4万円とか10万円とかもらえそう。うまく取れればいいでしょうけど競争率高そうだし、独特の界隈がありそうで怖い。
とりあえず私の場合は、書評を書くのは純粋に、「この本を多くの人に読んでもらいたい」という気持ちがほとんどです。収入目的では全くもとがとれません。書評を書くことで売名できるかというと、それも全くなさそうです。カクヨムの投稿作品にもレビューをちょくちょく書いていますが、それも同じ理由です。
商業媒体に書評を書けばお金になるのに、なぜカクヨムでお金にならない書評を書くの? と思う方もいるでしょうが、お金にならないという点ではどっちも大差ないんです。「この本(作品)を多くの人に読んでもらいたい」という気持ちでやってます。
カクヨムだとお金にはなりませんが、ガンガンお礼の言葉をもらえます。モチベーション上がりますよね。
ちょっとだけ補足すると英文の書籍やレポートの紹介をする場合は原稿の分量が多くなることもあり、金額は通常の原稿料よりも多くなります。それでも1本5万円超えることってないかなあ。英文の書籍やレポートを読むことを考えると元はとれません。本を買う足しになるくらい。おそらく紙の雑誌だと原稿用紙1枚4千円くらいで、1万字書いて10万円くらいになるんでしょう。いいなあ。4千円というのは過去に私が短篇やコラムを寄稿した複数の紙媒体がだいたいそれくらいだったことからの類推です。
あくまで「せっかく読んだんだから日本語で書評も書いて紹介しよう」という動機の方が大きいです。
あ、カクヨムロイヤリティプログラムはものになりそうにないので、章のタイトルを変えました。
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