第103話 相談6号 ミステリの書き方、使い回し、どこで書くか
《ルビを入力…》相談いただきました!
【自主企画用】小説家デビューを目指していて壁にぶち当たって迷っている体験談、相談
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888426094/episodes/1177354054888426114
いくつかお答えした方がよいですよね。
わかりやすく、質問されていることからいきましょう。
●ミステリの書き方
正直に言うと、これに関しては何冊か本が出ており、そっちは売れっ子の方が書いていますので信憑性も高いです。私の師匠である島田荘司先生も書いてらっしゃいます。
トリックを考えるのが苦手な方は、古典を
くわしくは 第11話 速筆の掟 核にオリジナルは必要ない 古典トリックを利用して受賞のケースもある
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888031782/episodes/1177354054888061778
それだけだとさすがに回答にならないんで、私の書き方をご紹介します。
シーンから書くのは同じです。
・トリックを思いついた場合=事件発生や解決シーンから書く
私の場合、ほぼありません。
・状況設定から入る=事件勃発シーンから書く
これは結構あります。謎のシチュエーションから書く方法です。この時点では誰がどのように謎を解くのかわかっていません。
・キャラから入る=キャラの映えるシーンから書く
これもよくあります。キャラを生かすシーンを書き、それが事件のシーンなら謎が始まります。
私の過去作だと本格ミステリとしてもっとも評価が高い『原発サイバートラップ』は状況設定から入っています。
韓国原発がテロリストに乗っ取られて、放射性廃棄物が100基の気球に吊られて上空に漂う。犯人の要求は竹島の独立。気球の制御は早い者勝ちで全世界に開放される。制御を奪えば好きな場所に移動させて放射性廃棄物をばらまける。
韓国の原発はほぼ全てが日本海側にあり、そこで大きな事故が起きると偏西風に汚染物質が日本に運ばれるということから発想したものです。
私の本で一番売れた『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』はキャラ設定から入っています。
こんな感じで書き始めて、書いているうちにトリックや謎解きを考え出しています。そこをひねり出すに際しては、過去のミステリの基本パターンとサイバーミステリの基本パターンが頭に入っているとかなり楽です。過去のミステリの基本パターンは前述のミステリの書き方の本にだいたい書いてあります。サイバーミステリの基本パターンは『サイバーミステリ宣言!』に載っています。
お気づきの方がいるかもしれませんので補足しておきます。私のやり方だと、プロットの段階でトリックが決まっていません。デビュー後はまずプロットを出して担当の方に見てもらうことになりますので、ちょっと困りそうです。実は困りませんでした。プロットの段階ではぼかした描写にしておいたり、適当なトリック(既存のサイバーミステリのトリック=ほとんど私のアイデアなの無問題)にしておきます。完成した原稿を見ると、違うトリックなわけですが、問題になったことはありません。魅力のある状況設定かキャラ設定があれば大丈夫です。
●使い回し
相談者が気づいた通り、何年も同じ賞に応募していると使い回しを覚えられる危険があります。上位入賞になればなるほど相手の記憶に残りやすくなります。なので、同じ賞に何年も応募する場合は避けた方がよいでしょう。
なお、ラノベは下読みさんが複数の賞でかぶることが多いようなので、そうでなくても使い回しは不利です。
●どこで書くか 紙と電子
結論から言うと、自分の好き嫌いで決めてよいと思います。ただ、その賞の受賞者の生存確率は確認しておいた方がよいでしょう。そしてデビュー後は業界の変化を常に気にすることが大事です。
*注 2020年5月24日、作者名を間違えていたのを読者にご指摘いただき、修正しました。
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