「僕は彼女達を愛している」
――同じスキル、もしくは相反するスキル同士がぶつかり合った場合、それはスキルの使い手同士の綱引きとなる。
「……?」
(それを悟って諦めたか)
そう結論付けた
「馬鹿な……!?」
だが、それも当たればだ。
「何故、余に逆らう!? <
「うん。ボクが使ったのは彼女達のことを知るための<
「<
皆はこんな世界もあったんだって、教えてあげたんだ」
エリックから見たクー。エリックから見たネイラ。エリックから見たケプリ。それを共感させ、伝えた。そして彼女達は、ありえなかった選択肢を体験した。
ただそれだけだ。攻撃を止めろ、なんて<
その気持ちが、
アラクネの糸は
「――はっ! そんな戯言で余の暴力を克服したというのか!?
ありえぬありえぬありえぬ! 優しさなどで心の傷は克服できぬ! 同情程度で、暴力に抗うことなどできぬ!」
「そうだね。僕もそう思う」
蟲使いとして受けた様々な痛み。それは簡単には克服できなかった。エリックに優しい人もいたし同情されたこともあった。それでも克服なんかできなかった。
だから、これは優しさや同情なんかではない。
「――僕は彼女達を愛している。その笑顔を守りたい」
共に戦い、連れ添った時間と経験。そして生まれた想い。
その気持ちが彼女達を動かしたのだ。
「ふざけるなぁ! 愛だとぉ! そんなもので、そんなもので余のスキルに打ち勝ったというのか! スキルを乗り越えたというのか!」
認められない。そう叫ぶ
「だけど。スキルやジョブが全てじゃない。そう思いたかったのも
「……っ!?」
そうだ。
蟲使いとして生きて、スキルやジョブで差別されて。
それでも頑張ろうと頑張っていた時がある。スキルの有無で全てが決まる世界だけど、それでもスキル以外で認められようと努力して、そう嘆いて。
「余は……間違ってなどおらぬ!
蟲使いとして生きよと神に言われ、泥水をすすりながら生きてきた! 血反吐を吐き、多くを奪って生きてきた!
それが、その努力が間違っていたというのか!?」
「いいや。きっとキミは正しい。……むしろ、ここで愛とか他人の気持ちに頼る僕の方が間違っている」
結局のところ、エリックは何もしていない。ただ彼女達に伝え、任せただけだ。
これまでのように。
「はっ……正しい余が負け、間違っている貴様が勝つか。実に滑稽!」
「うん。それに僕が勝ったところで、何も変わらないけどね」
「だろうな。
危険視され、第二の蟲王を恐れた輩から殺される未来が見えておるわ!」
だろうね、とエリックは呟いた。
一緒に戦ってくれた人はいい人だけど、それがこの世界の総意ではない。
「そーなんだよなぁ。……どうしよう?」
「……お主、そこは考えてなかったのか?」
「考えていたけど、三人に会いたくて」
「…………余はこんな色ボケに負けるのか。解せぬ!」
やり直しを要求する! と言いたげに叫ぶ
「ははは。ごめんね。実のところ、キミに恨みは全くないんだ。三人のこと以外では」
「口惜しい。いずれ
全く、後悔ばかりの人生であったわ――!」
言って大笑いする
アラクネの糸が首を絞め殺すのと、装甲が関節をねじ切るのと、炎の槍が貫くのと。それらはほぼ同時に行われ
「あ……」
ただその立ち昇る魂の中に、確かにクーとケプリの気配を感じていた。
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