「この世界の君達のことを教えてほしい」
――同じスキル、もしくは相反するスキル同士がぶつかり合った場合、それはスキルの使い手同士の綱引きとなる。
「死ね」
アラクネの糸で締め付け、ヘラクレスのパワーで押しつぶし、元太陽神の炎で焼き尽くす。
そのどれもがエリックからすれば
だからエリックは<
――同じスキル、もしくは相反するスキル同士がぶつかり合った場合、それはスキルの使い手同士の綱引きとなる。
(この三匹は余の体になじませた、もはや同化状態。
異世界の自分であったとしても、そのスキルが同質だったとしても、扱いなれた我が身と言う時点で余の勝利は揺るがぬ!)
単純に<
だからというわけではないが――
(急に<
エリックがスキルの使用をためらったのは、そんな理由。元の世界の彼女にそう含められたから。だから――
「この世界の君達のことを教えてほしい」
<
対象は、クーとヘラクレスとケプリ。
この世界で――エリック・ホワイトが蟲王として君臨する世界で、どんな生き方をして今に至ったのか。それを知りたかった。
『クモじゃないわよ。あーしはアラクネ。名前はクー』
最初に流れ込んだのは、クーとの出会い。
『あはははは。人間にいじめられて復讐するんだ。いいよ、あーしそういうの大好き!』
『ねえ! 食べていい! この街の人達食べていい!』
それは――人間の敵ではあるがエリックがよく知るクーの笑顔だった。その笑顔は魔物だから、というわけではない。
(彼女は、きっと僕に合わせてくれたんだ。人間を食べないようにってときも、食べていいって時も。自分勝手に見えて、誰よりも孤独を怖がる臆病者だから)
だからクーは嫌われないように生きていた。自分を捨てない相手から見捨てられる恐怖を知っているから。
だから――
『や! 何でも言う事聞く! だから、だから捨てないで!』
『
だから、自分よりも『有用』な軍隊である
『ああ……うあ、あーしが、溶ける……! いや、なのにぃ、ああああ!』
肉体が崩れ去る苦痛と大事にされる快楽。それがその時から今も続いている。
『オレの名前はバスターヘラクレス! 悪辣非道な人間共に鉄槌を下すためにここに参上!』
次に流れ込んだのは、ネイラ――正確にはヘラクレスの記憶だ。
『なぁ!? ヘラクレスに命令して、オレの身体を!?』
『うああああああああああああ!』
森の聖人とはいえ、
『やめ……もうやめてください……お願いします……』
その心を折るまで拷問は続き、泣き叫ぶエルフの悲鳴は気が狂うまで終わらなかった。そして主を失ったヘラクレスは、蟲王に操られるままに同化する。
『貴方は
そしてケプリ。彼女は
『あ……っ!』
同化したアラクネの糸に捕らわれ、ヘラクレスのパワーで蹂躙されていた。
『元神か。いいだろう、お前は心から屈服するまで調教してやる。たっぷり時間をかけて、身も心も余に従うように仕向けてやろう』
『敗けません……。この身は、
そうして長い時間ケプリは
「この世界はありえたかもしれない可能性の世界。エリック・ホワイトが『正しく』スキルを使って『成功』した世界」
スキルとは神に与えられたモノだ。神がそうしろと定めたモノだ。
だから与えられたスキルを最大限に活用する
「だけど、そういうふうにすれば強くなれると分かったとしても、僕はそんなことはしない」
正しい事と、やりたいことは違う。もしそうすることが正しいとしても、エリックは絶対に彼女達の笑顔を奪わない。
「あんな悲鳴を上げさせることが、正しい事なんて認めない!」
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