「なんでそんな話になるのかなぁ……?」
「エリっちに手を出そうっていうんなら、あーしが黙ってないわよ」
「当然オレもだ。ぶん殴ってでも止めてやるぜ」
「
宣戦布告をするクドーの前に立ちふさがるクーとネイラとケプラ。ネイラを戦闘にして、少し後ろにクーとケプラ。三人はエリックを守るように陣取った。互いの戦術を意識した陣形だ。
「なんと!? 貴方達は極悪非道な男に洗脳されたのですね。あるいは脅迫されているとか! なんという事でしょう! 罪を重ねるにもほどがあります!」
「なんでそんな話になるのかなぁ……?」
「え? だって貴方のような平均値以下顔の犯罪者がエルフとクロギャルと幼女を連れてる理由ってそれ以外にないと思いますけど」
クドーの純度100%嫌味なしの返答にエリックはざっくりと心にダメージを負った。そして同時に悟る。この勇者人の話聞かないなぁ、と。
「分かりました。先ずは貴方達の心を解きほぐしましょう! 材料は先ほど狩ったイッカクシロウサギです!」
<
「先ずはウサギを適度な大きさに切り分けます!」
驚きから覚める間もなく動き出すクドー。イッカクシロウサギを空中に投げると同時に、剣閃が煌いた。クドーが手にした板の上にウサギが落ちる。その時には皮剥ぎから内臓抜き、そして各部位の分断が終わっていた。
「えーと……料理? んなモンしてる余裕なんか……きゃん!」
「なんだ!? この圧は
「信じられませんが……包丁を振るった際の衝撃の余波ですね」
「……え? 包丁の余波って何それ?」
「つまみ食いは許しません!」
料理しているクドーに攻撃を仕掛けるクーとネイラだが、その事如くが不可視の力に阻まれる。ケプリの説明を信じるなら、包丁でウサギ肉を刻んだ時の余波らしい。
「角は細かく砕いて煮込んでシチューの元に! 内臓は大きさをそろえて鉄串に刺して焼きましょう!
本命のお肉はトマトと煮込んでパスタ用のお肉に!」
クドーが喋ると同時に調理器具が宙を舞い、炎が広がる。熱を外の漏らさない隔壁魔術を展開して素材を焼き、何処からともなく現れた水が自動で鍋の中に入って煮込まれていく。そして――
「できました!」
『イッカクシロウサギ
クドーがそういうと同時に、全ての料理がテーブルの上に並ぶ。時間にして数十秒。料理の素人でもわかる事だが、そんな短時間で料理が完成するはずがない。だが目の前の料理は湯気を放ち、見た目と香りが食欲をそそっていた。
「えーと……なんだろう、よくわかんないけど食べないといけない気が……」
まるで状況に流されるように、クーとネイラとケプリは椅子に座り、その料理を口にする。
瞬間――!
「っ! なのこれマジウマ!? トマトとウサギの肉ってこんなにおいしい組み合わせなの!? まるで出会うべくして出会ったカップルみたいな、運命的組み合わせ!」
「うっはー! この内臓はサイコーだぜ! 苦みがいい感じで酒を飲みたいって思わせる! この酒泥棒! しかも一口食う度にもりもり活力が湧いてくる!」
「このシチューも絶品です。角はすなわち骨の一部。イッカクシロウサギの生命の根幹ともいえる角から染み出た味が、全身を駆け巡って力になります!」
「え? え? 皆いきなりどうしたの!?」
いきなり説明口調に喋り出す三人を見て、エリックは戸惑っていた。
そんなエリックの肩を叩き、小さく囁くヴィネ。
「落ち着てくださいホワイト様。思考すること。それが大事だという事を忘れないでください」
「え? なんでその事を……?」
「その話は後日。我が主は、貴方の活躍に喜んでいます」
それはエリックに生きる術を教えてくれた人の言葉。それを思い出し、エリックは目の前の状況を理解しようとする。
「今まで雑魚魔物と侮っていたイッカクシロウサギに、ここまで感じちゃうなんて……あーし、こんなの始めてぇ! やぁん、ウサギに体中、包まれちゃうぅン!」
「オレも限界だぜ、畜生! こんなオレを見ないでくれ! ウサギキックに勝てねぇ!」
「
料理を食べながら興奮する三人。何やら幻覚めいた何かを見ているのか、彼女達の周囲はウサギに関する世界に包まれていた。
そして――
「ウサギに完全敗北しちゃうううううううううう!」
叫ぶと同時にクーとネイラとケプリの服が破れ、光り輝いたかと思うとウサミミヘアバンドと蝶ネクタイ、肩出しスーツに網タイツという格好――バニーガール姿に変化して、そのまま地面に倒れ伏した。
「………………いや! これどう理解しろと!」
そしてそれを見たエリックは思わず叫ぶ。料理を食べた三人がいきなりバニーガールになった。そうとしか言えない状況だ。
「どうです! 美味しい料理は全てを解決するんです!」
「えええええ!? そういう話なの、これ? なんかこう別の何かって気がするんだけど!」
「さあ、次は貴方ですエリック・ホワイト! 貴方にはどんな罪で告白してしまう『オークキングカツ丼』を食べてもらいます。
これを食べれば涙ながらに全ての罪を告白しますよ!」
やばい。エリックは身の危険を感じていた。通り魔殺人は冤罪だが、クーを街中に入れていることがばれれば、この街から本当に逃げるしかなくなる。
(こうなったら隙を作って、皆を連れて逃げるしか……!)
細かく考えている余裕はない。近くにいる虫に<
「いやああああああああああああ! ゴ、ゴ、ゴキ――!」
だがエリックはクドーが顔を青ざめて逃げ出していくのを見た。目の前を通過した虫がよほど苦手だったのだろう。わき目も見せずにギルドから逃げていく。
「良くわからないけど……助かった、のかな?」
茶色の虫を<
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