「……で、どうすればいいんだ?」
「どうにかしてやるぜ!」
とネイラは言ったが、
「……で、どうすればいいんだ?」
特に具体的な策はなかった。基本的に彼女は拳で殴るのが基本であり、こういった調査はエリックに丸投げしていたのである。
「そうでござるなぁ。エリック・ホワイト本人がここに居れば拷問などで情報を聞き出せるのでござるが」
「推奨できる案ではありませんね。それが可能ならこの国の警邏もそれを行っているでしょうし」
「となるとコカトリスの卵の取引先が分かればいいのでござるが、その手掛かりもここにはなし。いやぁ、手詰まりでござるなぁぶはぁ! なんのまだまだ」
はっはっは、と笑うマツカゼ。その後で火傷ダメージで一度ぶっ倒れた。その後直ぐに復活するが、あまり気に留めないと言った感じでネイラをケプリは思考する。
「こういう頭使うのはオレの性分じゃねぇんだよなぁ」
「確かにこういう情報収集は
「ふむ、何でござるか? あ、今一番喰らってみたいバッドステータスは石化でござる。意識は残って体一つ動かせない。その状態が長く続けば狂気に陥るとまで言われている。<
「あ。はい。そのお話は後で」
語りだしたマツカゼを制するケプリ。そんな事を聞きたいわけではないのだ。
「貴方は何故ここにコカトリスの卵があると掴んだのですか?」
「ここにはコカトリスの毒の残渣があるからでござるよ」
「それは確信に至った判断材料です。
ケプリが聞きたいのは、この納屋を調べようと思った経緯です。毒は外には漏れていないはずなので、外から匂いを嗅いだという事ではないはず」
「そっか。バステおっさんは調べた結果ここに来たんだよな。ってことはその情報があるはずだ」
指を鳴らすネイラ。マツカゼはただの偶然でここに来て、確信したわけではない。調査を重ねてここに来たのだ。
「エルフにおっさん呼ばわりされるのは心外でござる……! せめてお兄さんと――」
「可能な限り考慮しましょう。それで質問の答えは?」
「それは考慮もされない流れでござるなぁ。あ、闇市の流通ルートを調べたのでござる」
「闇市?」
「奴隷売買などを始めとした表には出ない商売のルーツでござる。そこを仕切る輩に色々取引をして、コカトリスの卵の話を聞いたのでござるよ。そしてここに至ったというわけでござる」
「うへぇ。オレ、一度そいつらにひどい目にあったんだよなぁ……」
水着大会で眠らされたことを思い出し、ネイラはうんざりした表情を浮かべた。最もきっちり殴ってお返しはしたのだが。
「ディアネイラ様のお相手したお方が今回と関係あるとは思えませんが……。ともあれ卵の取引相手を調べて、ここに住んでいることが分かったという方向ですか?」
「正確には毒を使う者を闇市で調べた結果、コカトリスの卵のルートを探り当てた次第。そして調べた結果、偶然にも蟲の毒を扱う相手だったと」
「偶然かよ。鶏が先か卵が先か、って言うのは洒落が聞いてると思うけどな。コカトリスなだけに」
「上手いこと言った顔しないでくださいディアネイラ様。そうなるとそのルートを調べて卵の取引相手がファr……なんとかホワイトさんではないと証明できれば、彼のテロリスト認定は解けそうですね」
言って頷くケプリ。ネイラも方針が固まったかと分かって頷いた。
勿論、ここまで徹底的にエリックをはめようとしている相手だ。他にも何らかの案を持っている可能性はあるし、現状でもエリックの社会的地位は追い込まれている。
だが、反撃の糸口をつかんでおくに越したことはないだろう。
「しかしそれは楽な方法ではないでござるよ。何せ相手は犯罪スレスレを生きる者達。見えない所では平気で法を犯しているでござる。現にコカトリスの卵などと言うものまで取り扱う始末」
「んなもんオレの拳でぶっ潰すだけだ! 相手が殴れるってわかれば怖くもなんともないぜ!」
「暴力が通じる相手かどうかはまだ判断がつきませんが、下手に交渉すれば足元をすくわれかねません。ある意味妥当な判断かと」
警告するマツカゼに、むしろ喧嘩上等と拳を叩くネイラ。呆れながらも愚策ではない事を認めるケプリ。
相手は裏社会の人間だ。悠長に話し合いをして通じる相手ではない。むしろ時間を与えずにこちらのペースで攻め立てるのが一番だ。仲良くしてやる義理も理由もないのだから。
「うむ。拙者は何も聞かなかったことにしよう。それでは健闘を祈っているでござるよ」
「おう、元気でなバステおっさん! いい毒見つけれることを祈ってるぜ」
「とても元気を祈る挨拶には聞こえないのですが」
「おっさん……おっさん……」
「そしてショックを受けるのはそちらですか」
ふらふらと扉から出ていくマツカゼ。その気配が完全に消えてから、ネイラはいきり立つ。
「そんじゃ、行くか! その闇市とやらに!」
「それはいいのですが……その闇市がどこにあって、その誰が卵を扱ったのかわかりますか?」
「…………えーと……?」
「マツカゼ様を追って聞いても無駄かと。『情報主への義理』とかで喋ってくれなかったでしょう。そういうお方です。
かなり手間ですが、調べるしかありません。一朝一夕ではいかないミッションですが――」
「いや、アテならある! オレに任せろ!」
自信満々に言い放つネイラに、ケプリは『えー、大丈夫かなぁ?』という表情を浮かべていた。
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