「ケプリは貴方に」
「
ケプリの言葉に、エリックは訳が分からないという表情をする。
クーとネイラと三人で相談していたかと思うと、真剣な瞳でこちらを見て殺してと言われたのだ。
「あのごめん。無理。というか話の流れが分からないんだけど。クーとネイラは何の話をしてたの?」
「エリっちがエリっちだよ、って話」
「大将いつも無茶しすぎだぜ、ってのを」
「いや、その流れでどうしてこうなるの?」
「はい。ケプリを殺せば私の
生物を殺したら、その魂の一部は殺したモノの力となる。魂は己に宿る魂と同化し、その魂が強ければ強いほど得る事の出来る
ケプリはかつて神であった
「いや。殺すって……ケプリが死んじゃうじゃないか」
「はい。ですがそれは些末です。
この世界の神に敗れ、三千年近く生きてきました。今この時こそが、私の命の使い時なのです」
三千年。
おそらくは平和に過ごしていただろう世界を突如侵略され、戦いに負けて自らの世界はこの世界に取り込まれた。このピラミッドはその残渣。この墳墓以外の自分の世界がどうなったかなど、知る由もない。
ケプリは使えるべき
その力になれるのなら、自分などどうなっても構わない。自分の死が
思えば屈辱の日々だった。世界を奪われ、魔物に堕とされ、王を祭る墳墓は盗掘者の目標となり。挙句の果てにエンプーサに攫われて穢れた魂に蹂躙され。
でも、それももう終わりだ。いまここで役目を果たせるのだから。
「そっか」
エリックはその気持ちを汲み取り、ケプリに手を伸ばす。
「ずっと辛かったんだね。大変だったんだね」
「……え?」
「三千年なんて僕には想像もつかないけど、その間ずっとファラオを待ってたんだ。
頑張ったんだね、ケプリ」
「そんなことは……はい」
ケプリの頭を撫でるエリック。その動作にケプリはおとなしく頷いた。
「僕はケプリが望む王様にもなれないしケプリを殺すこともできないけど、その王様を探すためなら力を貸してもいいよ」
「え?」
「僕と一緒に来ないかい? その……少なくともここに居るよりはいろんな人に会えると思うよ。その中でケプリの眼鏡に適う人が――」
「すみません、
エリックのセリフを遮って、手を突き出すケプリ。
「ケプリは貴方に
「いや、そういうのは僕無理って言うか。他に適任者が――ひへ、
「なってほしいと願っているのですが」
「
「なってほしいと願っているのですが」
「やめとけチビッ子。大将は頑固だぞ」
無表情でエリックの頬を引っ張り問い詰めるケプリ。ネイラが割って入らなければ、延々と同じことが続いただろう。
「その……魂がどうととかはよくわからないけど、ケプリにはそれが分かるんだよね。だったらいろんな人の魂を見て、適任者を探した方がいいと思うんだ。
僕でないといけない、って言う理由はないと思うんだけど……」
「逆になぜそこまで頑なに拒むのかが分かりません。確かに
いいえ、それ以前に
「ええと……そもそもそんなこと望んでいないって言うか」
どういえばケプリが納得してくれるかわからないので、エリックは一番最初に思いついた理由を口にした。
「二人は僕に仕えてくれる侍女じゃなくて、僕の大事な仲間なんだ。そんな命令なんてしたくない」
エリックの言葉にケプリは沈黙し……その視線をエリックの後ろに居るクーとネイラに向けた。エリックの言葉を聞いて、悶々としている。
「うーん……仲間……仲間……なしありのなしだけど、ギリ許す」
「蜘蛛女が我慢するなら、オレも拳は収めておく」
「あれ? なにか僕間違ったこと言った!?」
「うわこのエリっち殴りたい」
「なんでそこでそういうのかなぁ。いや、仲間って言ってくれることは純粋に嬉しいけどよ」
「…………成程、そう言う事ですか」
ケプリはエリック達三人のやり取りを見て、ため息をついた。
「ともあれ
「え、うん。そうだね。ケプリを殺すことも、当然しないから」
「はい。理解しました。
「何かすごい言われようだけど……。ともかく理解してくれたのなら――」
「はい。
「よかった……って。え?」
きょとんとするエリックを見上げるようにして、ケプリは真っ直ぐに言い放つ。
「ケプリが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます