その144:孔雀はソロモンの空を飛ぶ その2

 

 日本はまだ春先といっていい季節だ。

 しかし、このラバウルはそもそも四季がない。

 常夏の島だ。井本少佐(最近昇進)は、腰の手拭いを手に取り、汗まみれの顔を拭いた。

 ただ陽向に立っているだけで、汗が噴き出てくる。

 

 強い陽光が肌に突き刺さるようで、痛みすら感じている。

 まだ、午前中だというのにだ。


 井本少佐は、復旧中の西飛行場を見ていた。

 中央高地に位置する、西飛行場は陸攻を中心に運用されている。


「思ったより、復旧は早いようだな、あのチャチな機材も有ると無しじゃ大違いか……」


 彼は、広大な滑走路を安っぽい音を立て走っているリヤカーに排土板をつけたような機材を見つめていた。

 中には本物のリヤカーを連結し、土砂を運んでいるモノもあった。

 そもそも、「排土車モドキ」はリヤカーを作っている会社がこしらえたらしい。

 今では、あちら、こちらの基地で活躍しているそうだ。


 井本少佐は「会社は儲かっているんだろうなぁ」と俗なことを考えた。

 娑婆(海軍から見た一般社会のこと)を考える余裕が自分にあることに、なにかホッとしたモノを感じた。


 ラバウルは手ひどく攻撃を受けた。

 井本少佐は、ソロモン海を突き進む、空母2隻に対し陸攻56機による攻撃を行った上空指揮官だった。

 

「空母2隻。結局―― 囮だったってわけだ」


 戦闘機ばかりを積んだと思われるアメリカ空母「サラトガ」と「レンジャー」は、一式陸攻に逆襲してきた。

 満載した戦闘機でだ。 


 井本少佐の胸の内には苦いモノがあった。

 はっきり言って、手痛い目にあったといえる。 

 防弾性能を上げた一式陸攻34型でなければ、さらに悲惨なことになっていただろう。


 それよりも、空母の数の判断を間違えたこと。

 多数の空母がそこに存在すると、報告してしまったことが、何より悔やまれる。


「まったく、戦闘機ばかり積んで、戦艦を突っ込ませる囮だったとはな――」


 自分の失態は認めつつも「そんな手は無茶な反則だろうがッ」とアメリカ海軍に問い詰めたい気持ちが湧いてくる。

 まあ、問い詰めるのではなく、現実には、爆弾を叩きこんでやるのであるが。


 とにかく、突っ込んできたアメリカ戦艦群はラバウルへの艦砲射撃を成功させた。

 そして、別働隊であった主力のアメリカ機動部隊の攻撃も受けた。


 西飛行場はほぼ全力ではないにせよ、陸攻の運用は可能になっている。

 しかし、戦闘機が運用の中心だった東飛行場は、シンプソン湾に近く、相当な被害が出た。

 中央高地に位置する西飛行場ほど、機能は回復していない。


《i_09ec8c4a》

 

 彼は、滑走路の復旧作業の空きエリアから飛び立っていく零戦を見やった。

 ブイン・バラレ方面の最前線に向かう機体だろう。


 このラバウルが後方補給基地として辛うじて機能している証左だ。

 最前線で戦う搭乗員は、一定期間で最前線から、このラバウルで休養をとるシステムとなっている。

 その戦力運用体制が、現在非常に窮屈なものとなっている。


 ラバウルには東飛行場、西飛行場、北飛行場、南飛行場、トベラ飛行場が整備されている。 

 しかし、運用支援体制を含めた規模では、東飛行場、西飛行場が突出している。


 要するに今のラバウルの航空基地としての能力は、以前の6割から7割程度になっているのだろう。

 ガダルカナル方面、アメリカを中心とする連合軍の航空戦力の増強は進んでいる。

 ラバウルの基地機能の低下は、直接アメリカのガダルカナル基地と対峙するブイン・バラレ方面への負担を増やしている。


「致命傷ではないが、厳しい状況だな――」


 井本少佐はそう言うと、懐からホマレを出し、口に咥え火をつけた。


 手の込んだ作戦で侵攻してきたアメリカに対し、大日本帝国海軍が反撃し、相当な被害を与えたことは知っている。

 ただ、井本少佐は、味方の戦果に対しても「蚊帳の外」であったという思いがある。


 結局、囮であった空母2隻の内、レンジャーを仕留めたのは、ラビから出撃した夜間攻撃隊だった。

 

「そういえば、峰長はよく助かったな……」


 彼は今、トラック諸島、夏島の海軍病院に入院中の後輩のことを思った。

 なんでも、サラトガ、レンジャーの2隻以外の空母を探す哨戒任務に就いた後、夜間攻撃にも参加したらしい。

 そして、峰長大尉の二式大艇は撃墜され、彼ひとりだけが救助されたとのことだ。


 改造された零式水上偵察機による搭乗員の救助体制は、死ななくてよい搭乗員を死なずに救っている。

 井本少佐の後輩である峰長大尉もそのひとりだ。

 ただ、彼は部下を全て失っている。


(アイツは責任感が強いからな―― それに比べりゃ、俺はどうも冷めているか)


 ありもしない空母を探させてしまったことは、自分の間違いだったと思う。

 自分に対する苦い思いはあるが、峰長に対し「すまない」と思う気持ちは薄かった。

 いや、ほとんどなかった。その様な気持ちは湧いてこない。

 決して彼を嫌っているわけでもない。むしろ、好感をもって高く評価しているくらいだ。


 井本少佐は紫煙を大きく吸い込むと、煙草ごと吐き出す。

 地に落ちた煙草をブーツでグリグリと踏みつけた。必要以上の力でだ。


「どの道、遅いか早いかの問題だ――」


 井本少佐は、アメリカを相手とした戦争で自分が最後まで生き残れるとは思っていない。

 望んで死にたいとは思わないし、死に場所を探しているわけでもない。

 ただ、定量的な可能性として、どこかで死ぬ可能性が高いということだけだ。

 そうとう確実な未来だろう。

 

 峰長は今回生き残った。そして部下は死んだ。

 戦争なのだ。そんなこともある。

 順番の問題だと井本少佐は思う。別に死にたいとは思わないが、それほど死を怖がる気持ちがない。

 

「与えられた任務を果たす。本分を尽くす―― それだけだ」


 彼はそう自分に対し呟く。自分の声が乾いた音に聞こえた。


        ◇◇◇◇◇◇


「油圧、温度とも問題ありません」

「温度上昇には特に気を付けろ」

「分かりました」


 伝声管を通じ、操縦員の声が井本中佐の鼓膜を震わせる。

  

 井本少佐は12機の機体を率いて、ソロモンの空を南下していた。

 ガダルカナルに対する偵察、および薄暮攻撃任務だった。


 その機体は一式陸攻34型ではない。

 そもそも、陸攻――

 つまり「陸上攻撃機」ではなかった。


 爆撃機である。

 海軍において「攻撃機」と「爆撃機」は明確に区別されている。同じ爆弾を落とす機体なのに、変に拘っていた。

 海軍における「爆撃機」とは「急降下爆撃」が可能な機体だけに与えられる名前だ。


 陸上爆撃機銀河――

《i_3de8409b》


 海軍は1939年に三種類の実験機を計画した。


 世界最高速度を実現する機体。

 成層圏飛行を可能とする機体。

 そして、大航続距離を実現する機体だ――


 1943年春――

 ソロモンの蒼空を飛翔する機体は、大航続距離を実現する実験機の系譜に連なる機体だった。

 一五試双発陸上爆撃機として発注され、「銀河」と命名された機体だ。


 小型の機体に大馬力の「誉12型」を2基搭載。

 誉は離床で1820馬力を叩き出す上に、1000馬力級エンジン並みの直径しかないという代物だ。

 小型なエンジンに18気筒を備え、ややピーキーな設計だった。

 ただ、徳山燃料廠から供給される100オクタン価の燃料と、入念な整備体制(言葉でいうのは簡単だが)があれば、実戦運用可能な機体となっていた。


 そして銀河は誉エンジンにより規格外の高性能機となっていた。


 高度5700メートルで300ノット(時速550キロメートル)以上を叩き出す高速性能。

 これは、いまだに数の上でアメリカ海軍の主力戦闘であり続けているF4Fワイルドキャットを軽く凌ぐ。

 最大航続距離は5500キロメートルに近い。


 そして、500キロ爆弾2発を抱え、急降下爆撃が可能な機体強度を持っている。

 当然、航空魚雷の搭載も可能だった。

 しかし、今、井本少佐の銀河が搭載しているのは滑走路の破壊に特化した「97式50キログラム投下焼夷弾」だった。

 陸軍が開発した航空基地攻撃用の焼夷爆弾だった。


 形の上では、一式陸攻の後継機といえなくもないが、次元が異なる機体である。

 いい意味でも、悪い意味でもだ。


 航空機としての性能は抜群であるが、機体を小型化したため、搭乗員は3名のみ。

 操縦員、偵察員、通信員だけだ。

 一式陸攻は7名で運用する。同機に存在する副操縦士、銃手が銀河にいない。

 ひとりあたりの負担は大きくなり、未熟練者には厳しい機体だ。


 防御機銃は前方と後方の20ミリ機銃2丁のみ。

 後方の旋回機銃は、いざとなれば通信員が使用することになる。

 防御火力は一式陸攻に比べ貧弱だ。 


 しかし、生存性でいえば、防御力を上げた一式陸攻34型より上であろうと井本少佐は思っている。

 彼は以前より、高速、重防御の機体を望んでいた。

 その意味で銀河は、井本少佐の願いをほぼ叶えたといえる機体だった。


 銀河はブローニング12.7ミリ機銃に対応する防御が施されていた。

 小型であるが、決して脆弱な機体ではない。

 その高速性能で敵を振りきり、防弾性能の高さで生き残るための機体だ。


 ラバウルに展開したばかりの第521航空隊、通称「鳳部隊」だけが銀河を運用していた。

 その数は定数では72機である。

 ただ今揃っているのは24機。そのうちの半分である12機による攻撃隊だ。


 ラバウルの基地機能が落ち、全機の進出は困難な状況だ。

 機体だけ揃っても、支援体制が維持できない。

 兵器単体が高性能になったということは、それだけ十分な支援体制も必要になる。


 単体でどのような高性能な兵器であっても、投入される環境や、運用方法の確立、支援体制の整備などの条件が揃わねば意味はない。

 その性能は技術者の自己満足の数字にしかすぎなくなる。


 現状では12機による攻撃が、目いっぱいというとこだった。

 整備に時間を費やし24機の集中攻撃案もあったが、それでは攻撃に隙間の日ができてしまう。

 結局、整備と攻撃を交互に行い、毎日攻撃を仕掛ける方を選択したのだ。


「月月火水木金金が日本海軍のモットーなんでな……」

 

 井本少佐は自分の思いを、諧謔を含んだ言葉として口にしていた。

 護衛の零戦零戦はブインで合流した。ガダルカナルとの直線上にあるのだから、さほど困難ではなかった。

 その機数は20機前後。


 かつて、空母攻撃に向かったときに60機近い零戦が護衛に付いたことを考えるとかなり少ない。

 だが、不安もないし、怖れもなかった。


「こっちもオボコじゃないんでね」


 銀河によるガダルカナル攻撃はこれが初めてのことじゃない。

 同じ機体でも当たり外れがある。どのような工業製品でも同じではあるが。

 

 井本少佐の銀河は完全に「当たり」の機体だった。

 現時点では、未成熟といえる誉エンジンも快調に18気筒の力強い輪唱を響かせている。


「来たか―― 奴らもどこから湧いてでるんだ……」


 零戦隊が翼をひるがえし、鋭いターンで機動した。

 薄暮の空を翼で切り裂くような動き(マニューバ)で、敵に向かっていく。


 敵――

 ゴマ粒のように見える敵だ。

 真っ直ぐな翼は、F4Fワイルドキャットであることをこちらに教える。

 より高速、高性能のシコルスキー(F4Uコルセア)ではない。


 銀河も加速する。背もたれに身体が押し付けられるような加速。

 最高速度で一式陸攻を時速100キロメートル上回り、最新の零戦とほぼ互角の速度を叩き出す機体なのだ。


 巡航速度にいたっては、零戦より速いのだ。今まで零戦に合わせ速度を落としていたくらいだ。

 鎖に繋がれていた、巨大な猛禽が、獰猛な爪を突きたてるため、南海の空を貫くように疾駆する。


 強固な鋼と高性能炸薬の爪もった猛禽だった。


        ◇◇◇◇◇◇


「グラマン、我に追従できません!」


 偵察員が興奮したように叫ぶ。

 後方を見やると、零戦隊の攻撃をかいくぐったF4Fが追ってくる。1機だけだった。


 零戦とグラマンの戦闘空域では、礫(つぶて)のように、海に突っ込んでいく黒ぽい機体が多い。

 中には煙の尾を引いているモノもあった。

 要するに零戦隊は勝っている。見た限り圧勝に見える。


 グラマンの数は零戦と大差なかった。

 その中で、護衛の零戦を振り切ったのは大したものだった。

 運がいいのか、腕がいいのか、もしくはその両方なのか――


「爆撃進路に入る――」

 

 井本少佐の声が電波となり虚空に広がっていく。

 12機の銀河が大馬力の誉エンジンを唸らせ、急降下を開始した。


 ぐんぐんと地上が迫ってくる。

 

(こいつら、本当にしぶとい―― いや強い)


 連日の空襲により、滑走路には爆撃痕が残っている。

 しかし、それは明らかに補修され、飛行可能な状態となっているようだった。

 その上、滑走路の拡張まで行われている。

 

「てぇっ!!」


 井本少佐の声で銀河は50キログラムの焼夷弾を隠ぺいしきれていない指揮所などの地上施設に叩きつける。

 10発の爆弾がばら撒かれ、地上を炎に包み込む。  

 更に、続く機体が、25番通常爆弾、50番陸用爆弾を叩きつける。

 爆発で炎と土砂が巻き上がり、滑走路が大きくえぐられていく。


 対艦用の通常爆弾も、信管調整を通常の0.2秒よりも、鋭敏に設定されている。

 鋼鉄の爪は、深く大地を穿(うが)ち、そこで炸裂していく。

 アメリカ軍をして想像の埒外にある貫通力のある爆弾だった。


 井本少佐は、燃え盛り、爆煙を上げる滑走路を見やり獰猛な笑みを浮かべた。

 操縦員は機体を引き起こし、引き上げのGが身体を襲う。

 それすら、どこか心地よかった。攻撃が成功した瞬間だけは何もかもが爽快だ。


 電探や、物資集積所が分かれば、そこを攻撃したかった。

 しかし、アメリカ軍とて莫迦(ばか)ではない。

 致命的な機材や燃料は、密林に遮蔽(しゃへい)されその場所は分からない。

  

 対空砲、対空機銃ですら、発見するのが困難なくらいだ。

 実際に対空砲火は周囲で爆発している。

 発砲煙は上がるが、それが本物であるかどうかの保証はない。


 同じことは日本軍でもやっている。

 本物の対空砲に合わせ、ダミーの砲煙を作るのは簡単なことだ。

 本物も偽物も構わず叩き潰すだけの余裕は今の日本にはない。そんな贅沢な戦いはできないのだ。


 そして、対空砲火の精度も密度も艦隊攻撃時に比べれば、お話にならないレベルだ。


「滑走路は叩いた。飛び上がった戦闘機は全損だろう――」

「まあ、そうでしょうね」


 井本少佐の声に、後方電信員が答える。

 すでに、攻撃成功の打電は済んでいた。 


「敵も追ってきませんね。まあ、追ってきても追いつけませんが」


 通信員が軽口とも思えるようなことを言った。

 井本少佐もそれを否定する気はない。ただ、そのような気楽なことを言える気分ではない。 

 

 今のところ、F4Fが相手の地上攻撃であれば、さほど脅威は大きくない。

 実際、銀河には被害は無かった。

 そして、夜になれば、一式陸攻が、アメリカ軍の安眠を妨害することになっている。


 だが、次の薄暮攻撃でも、敵は迎撃を行い、破壊したはずの滑走路は修復されているのだ。

 そして、ブイン・バラレ方面を攻撃し、夜中にはB-17をラバウルまで飛ばしてくる。

 奴らもまた、戦争に対し真面目で勤勉だった。


 今日被害はなかったが、アメリカ軍がいつまでも同じようにやられるわけもないだろうと井本少佐は思う。

 こちらが新鋭機を出せば、向こうだって開発はしているのだ。していないはずがない。


 いつまでも同じ状況が続くわけがない――


 なにもかもが不確実な戦争の中、井本中佐はそのことだけは確信をもっていた。


        ◇◇◇◇◇◇


 機体整備の日。つまりガ島攻撃に飛ばない日だ。

 井本少佐は、上官からいきなり呼び出された。


「え? 私の乗機をですか?」

「正確には君の機体を含め4機だな。トラック島の航空廠に送る」

「なぜですか?」


 ラバウルに有る「銀河」をトラック基地に戻すという話だった。

 井本少佐は困惑の表情を浮かべるしかなかった。

 軍隊であるので、命令は絶対だ。出来るのはその程度しかなかったということになる。


「新しい機材を受領して戻ってくるのだから問題はなかろう」

「数の上ではそうですが……」


 機材の数が増えるというなら、話は分かる。

 しかし、これは機体の交換だ。

 井本少佐の銀河が何らかの不具合を抱えているなら分かる。

 今は表面に出ていないが、何かの問題があるのか? 彼はまずそう考えた。

 そして、上官に確認する。答えは「否」だ。


「ではなぜですか? あの機は全く問題ありません。むしろ「当たり」といっていい機体です」

「私にも分からんが…… なんでも、トラックで改造を加えるらしい」

「改造ですか? トラックで?」


 確かにトラック基地には航空廠があり、多少の改造はできる。

 しかし、なぜ状態のいい自分の機体を選んで、わざわざ改造するのか?


「電探の搭載ですか?」


 改造ということで、真っ先に頭に浮かぶのはこれだ。

 電信員の負担は増えるが、それであれば、話は分かる。


「どうも、そうじゃないらしい。正確なことは分からんが、搭載乗員を1人増やして4人乗りにするらしい」

「は? 4人乗りですか?」


 確かにその程度の改造であれば、トラックでも可能だ。

 ただ、3人乗りの銀河を4人乗りにする意味が分からなかった。


「電探専門の1名を増員させるのでしょうか?」


 上官は「君は電探に拘るねぇ」というような顔を見せながらも、それを否定した。

 そんな話は少なくとも聞いていないということらしい。


「新品の機体になるんだ、悪くはないだろう」

「はい。まあ、そうですが……」


 あれだけ調子のいい機体を取られるのは、何とも納得できない。承服できない話だ。

 ただ、軍隊は命令によって成立する組織であり、井本少佐は軍人だ。

 よって、この命令は絶対だった。


 ただ、誰がこんなバカな命令を出したのだろうと思う。

 おそらく海軍のかなり上の方のバカな奴の思い付か何かだろうと推測する。


 井本少佐の「上の方の思い付」という部分は当たっていた。

 ただ、それが「バカ」なことだったのかどうか――

 それが、試されるのはもう少し先のことになる。


 提案した「バカ」は命を懸けて、それを試すのだ。


■参考文献

日本海軍の爆弾 兵頭二十八(著

高速爆撃機銀河 木俣滋郎(著

日VS米 徹底分析陸海軍基地 学研

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