第37話 真相

 ギルドと各種組織との取引記録、その中には領主の名前もあった。

「叔父上はこいつを見せたかったのか?」

 自分が死ぬことが分かっていて誰かにその罪を知って貰いたかったのかもしれない。紋と一緒に…こいつは俺が預かろう、そして然るべき人に託そう。

 もしこの記録にある通りギルドが違法に遺物を取引しているのだとすれば何らかの目的で俺たちと領主を殺すために手を回したということになり、ドラゴンの調査依頼も特例もそのための方便である可能性が高い。どうりで資料が少ないわけだ最初から調査させる気なんてなかったのだからあわよくば依頼中に魔獣に殺されたで済まそうとしたのかもしれない。

「そろそろ出るか…」

 中身だけを頂いて、箱を元の場所に戻す。伸びてる男は服を整えて椅子に座らせたうえで机にうつぶせにする、執務中に寝てしまったで済むだろう。

 証拠の隠滅を済ませてから窓を伝って地面に降りる。あとは定時に降りる跳ね橋に合わせて脱出すればいい。


「それで成果はこれか…」

「そうだ、そっちは?」

 数日後、クラウディアと情報の交換をする。ドラゴンに関する情報を現地で集めてもらった、ドラゴンに関する伝承は本当だが人に仇を成したという記録はなく特例での依頼は本来ありえない物であった。

「あと前の調査をしたとされてる連中が帰って来たって話は聞かなかったわ、行ったきり姿を見てないって」

 やはり依頼を理由に誘い出して殺したのかもしれない。理由はわからないがギルドの遺物売買の関することであろう。俺の組のように生きる遺物を抱えているといったことではないとは思うが。

「どうするの?」

「一度ギルドに戻るさ、仲間が待ってる」

 無事でいてくれればいいが。

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鉄と宝と 河過沙和 @kakasawa

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