第36話 侵入
ドアの前に立つだけで勘づくとは…神経質だとは聞いたが敏感すぎる、あらかじめ知ってたんじゃないかと疑うくらいだ。
「誰だと聞いている!?」
こんなに喚かれては面倒だ、他の兵士に気づかれる可能性もあるし早く制圧してしまうか。
扉を開けると同時に一直線に声のした方へ突撃。的確に首を手で締め上げ意識をおとす。扉に向かって来ている途中で立っていたこともあり簡単に締め上げることが出来、顔を見られずに済んだ。一通り体を調べたあと床に横たえる。
「大体の物は棚にあったはず…」
やましいものは大抵棚の一番下で大きくやましくない物の下に隠すもんだ。案の定大判の封筒の下に厳重に鍵で封をされた箱が収められていた。確か親父が作った箱だったと思う。鍵はピッキングすれば開くが後が残ることを考えると正規の手段で開けたいものだが…そこで倒れている男は持っていなかった。
「魔法使ってみるか…」
あまり得意ではない上に魔力の痕が残るので使いたくはないが侵入と犯行が発見されるまでにかかる時間を考えると問題はないように思える。それまでに脱出できればいい。
錠前に魔力を吹き込み、魔力で浮かび上がった鍵の形を意識の内に取り込み必要な部分のみを動かすよう慎重に力を掛ける。一段目が回る、二段目が回る…開いた、だがこれで終わりではない。箱自体にも仕掛けがあった、箱に組み込まれた機構に特定の動きをさせることで開くもので開くためにはパターンを知っている必要があるが、うちの親父が珍しいものをつくっていたので答えを覚えていた。
「なんでこいつが…」
中には領主の証明である紋とギルドが様々な理由で接収した遺物の売買記録が入っていた。
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