第12話 鬼山警部惨状

 2時間後、警視庁の鬼山警部が、若い刑事2名を連れて水郷警察署に到着した。

 鬼山警部は、

     「私は、警視庁捜査一課の鬼山です。

      さっそくですが、容疑者に会わせてもらえますか」

と言って、取り調べ室で男に会った。

     「お前が、連続殺人をやったのか?」

と、鬼山が質問すると

 容疑者は、

     「俺は、何もやっていねえよ」

     「俺がやったと言うなら、証拠を見せろよ、証拠をな!」

と、強い口調で犯行を否認した。

 その後、警部は、別室で田中刑事に

     「きゃつのDNE鑑定は、やっているんだろうな」

と、尋ねた。

 田中刑事    

     「すでに千葉県警の方でやっています」

 鬼山警部

     「ところで、誰が男を逮捕したのだ?」

 田中刑事

     「Jの文字が入ったバイクの繋ぎを着た女だそうです」

 その言葉を聞いた鬼山警部は、途端に目を吊り上げ、態度を急変させた。

     「何! その女は、ジャンヌ洋子だろう!」

     「ジャンヌは、今、何処におるのだ?」

 佐藤刑事

     「事情聴取のためパトカーに先導され警察署に来る途中で、

      とんずらしたそうです」

 鬼山は、

     「ばか~!」

     「またしてもジャンヌにやられたか」

と、大声で怒鳴った。

 田中刑事と佐藤刑事は、口をポカンと開け、あっけに取られた。

     「ん~、悔しい! 悔しい!」

と、鬼山は、顔が真っ赤になり、正に赤鬼の様相であった。

     「ジャンヌが捕まえたのなら、あの男は、間違いなく黒だ」

     「もういい、東京に帰るぞ!」

     「おい、田中と佐藤、帰ったら柔道を教えてやるからな!」

と、鬼山警部は、顔を震わせ悔しさをにじませていた。 

 田中刑事は、警部のうっぷん晴らしになることを予想し震えていた。

     「私は、捜査書類作らなければならないので、今日は、残念ながら

      参加できません」

     「佐藤が出られると思います」

と、田中が交わした。

 すると、佐藤も

     「私は、今日、ちょっと下痢してまして体調がよくないので・・」

と、言った。

 それを聞いた鬼山は、一挙に噴火した。

     「何! お前ら、わしの好意を無にするのか?」

 赤鬼の真っ赤な噴火顔を見た2人は、真っ青になり

     「とんでもございません。神妙しんみょうにお受けいたします」

と、震えながら頭を下げた。

     「それでいいんだ、それでな」

と、鬼山が静かにうなずいた。

 その後、2人は肩を落とし、鬼山警部の後から東京へ戻ったのだった。    

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