第7話 成田線の電車の中

 夕子が、ジャンヌにメールを送信してから、すでに20分が経過していた。

 電車は、佐原駅手前の大戸おおと駅まで来ていた。

 乗客は、徐々に降り少なくなっていた。

 夕子は、謎の男の視線を感じコチコチになり、恐怖におびえていた。

 彼女は、心の中で、「ジャンヌ様、早く来て下さい」と、祈っていた。

 その間も、謎の男は、夕子が乗車している隣の車両から通路ドアのガラス越に

野獣が獲物を得る様に、じ~と彼女を見つめていた。

 男の年齢は、31歳。身長177cmのガッチリ型で怪力の持ち主。

 目の眼光が鋭く、顔色は、青白く陰湿な感じであった。

 髪は、目が隠れる位に前髪を垂らしていた。

 その時、車内から

    「この電車、まもなく佐原駅に到着します」

との放送が流れた。

 夕子は、恐怖のあまり、ますます体が硬くなっていた。

    「間もなく、佐原駅だ」

    「でも、駅に着いたらどうしよう?

     ジャンヌ様は、駅で待ってなさいと言った」

と、彼女は、心の中で葛藤かっとうしていたが勇気を奮って佐原駅で降りた。

 他に数人の客も降りたが、男が電車を降りた様子はなかった。

 彼女は、定期券を自動改札機にかざし、改札口の外に出た。

 ジャンヌと約束した通り、構内のベンチに座って待つことにした。

 外は、もう、日が暮れて真っ暗だった。

 夕子の自宅は、運河沿いに徒歩で15分の所にあった。

 彼女は、スマホを取り出し、ジャンヌに

   「今、佐原駅に着きました」

   「駅の構内で待っています」

と、メールを打った。

 次の瞬間だった。彼女の後ろ髪が、誰かにでられる様に触られた。

 その触り方は、男のごっつい指で頭から首筋にかけて下す様にである。

 夕子は、ス~と血の気が引いた。

 ハッとして後ろを振り向くと、怪力男が、

   「お嬢さん、夜道は、暗いですよ」

と、低い声を出し立っていたのだった。

 夕子は、もう、頭の中が真っ白になり、パニックに陥ってしまった。

 何が何だか分からない。わからないまま無我夢中で走り出した。

 怪力男は、「ニタッ」と笑い、静かに彼女を追いかけ始めた。

 そう、夕子は、男の罠にはまってしまったのだ。

 その時、殺人ゲーム開始のゴングが鳴ったのだった! 

 


 

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