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「
母の声で今日二度目の眠りから覚めた。次こそは本当の朝だ。
ベッドは壁に沿っていて、体を起こすと、横にはいい感じに窓がある。
カーテンを一思いにあけ、太陽の日差しを浴びる。
私の部屋はこれといって小さいわけではないが、新鮮な空気を吸うために、雨が降った日以外はカーテンと一緒に窓も開け、外を見る。
外には山がある。田舎に住んでいるわけではないが、私の部屋は山側にあるため、窓を開くと自然が目に入る。資格のみならず、聴覚からも自然の営みを感じる。風が木を揺らす音、鳥の鳴き声。あと、たまに隣の家のおじさんのくしゃみの声。これは、自然とは関係ないけれど。
一日のルーティンみたいなものだ。これをやらなきゃ一日が始まった気もしない。
「はーい、今行くー」
母に返事をし、着替える。
今日はどれを着て行こうか。
今日の講義は10時からで、今は8時。大学までは1時間かからない程度とはいえども、もたついている暇はない。化粧だってしなければならない。女の人の正装みたいなものだから。
服を着てご飯を食べる。今日は大好きな炒り卵に白米。
簡単な上に美味しい。
私の家は、卵焼き同様甘口仕様だ。
お腹にご飯をためて、大学の用意をして、家を出る。
駅までは自転車で行く。
自転車を漕ぎながら、好きな歌を小さく口ずさむ。
誰が歌ったかも知らない曲。いつの頃からか、気がつくと歌っていた。誰が作ったかも、いつの曲かも、曲名も何も知らないのに、歌詞の綺麗さ、記憶に残りやすいメロディーライン。私はこの曲を、1人で無名とよんでいる。
駅に着き?駐輪場に自転車を止める。電車がそろそろやってきそうだ。慌てて、チャリキーを抜き、リュックのポケットの中に、走りながら手探りでチャックを開けて突っ込む。
ホームへ降りると、既に電車のドアは開いていて、沢山の人が流れ出てきては、また別の人々が箱の中へと吸収されていく。私も、一緒に吸収される。
有名な曲が流れ、電車のドアは閉まり、ゆっくりと動き出して加速する。
窓の外を見つめる。
行き交う人々、流れすぎていく家々。遠くなる、私の家の裏山。どんどんと小さくなる。
この中に、私の祖父もいたのだ。ピシッとスーツを決めて、彼らと同じように、腕時計を見て、忙しなく会社へと向かってたのだ。もう、過去の話だ。今ああやって動く人たちも、いつかは消えて無くなるのだ。それは、私も例外ではない。
毎日、規則的に行われる日々が、いつの日か不規則となりそしてなくなる。
少しの長旅。学校までの旅。もう何度も何度も行った。それでも、飽きずに行く。全ては知るため。
真実を知るため。
胡散臭い真実と呼ばれる物語の、トゥルーストーリーを知るため。
雲は流れる 無花果 涼子 @ichiziku121202
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