第7話
「お父さんが亡くなったわ」
母から電話が入った。
丁度、会社から帰ったばかりだった。
僕は車を飛ばして、病院に向かった。
制限速度を少なくとも三十キロはオーバーし、少なくとも三つの赤信号を無視して病院に向かった。
病院に駆けつけると、母も妹もまだ来ておらず、僕が一番乗りだった。
病室にはいると、裸にされた父の体を数名の看護師さんが泣きながら拭いていた。
ミイラのようになった父の姿に呆然していると、看護師さんの一人が来て、「もう少し外で待っていて下さいと言った。
頑固で意固地で口うるさい父の身体を丁寧に拭き清めながら、看護師さん達は泣いていた。
きっと、父は母や妹だけではなく、会社の人や病院の関係者にも優しかったのだろう。
僕以外は。
あの時、父が煙草を吸い終わった後、もう二・三本父に煙草を渡しておけばよかったと思う。
大好きな酒を断つ決心をしていたにも関わらず、あれほど煙草を吸いたかったのだから。
もしかしたら数本の煙草が僅かな希望になったかもしれない。
Das Ende.
煙草 相生薫 @kaz19
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます