第1185話十六年四月五日、独り平城の故宅に居りて作りし歌六首(5)

鶉鳴く 古しと人は 思へれど 花橘の にほふこのやど

                   (巻17-3920)

※鶉鳴く:「古し」にかかる枕詞。


すでに古びてしまったもの寂しい旧都と、世間の人は思っているようだけれど、(そんなことはどうでもかまわない)橘の花が、昔のままに、咲き誇っているのだから。


旧都に残った家持は、新都に移った人の声などは気にしない。

まず、眼前の橘の花を愛でる。

橘の花は、ここが華やかな都だった時と同じに、咲き誇っている。

移り気な人間よりも、よほど素晴らしいではないか、と詠うのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る