第1092話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(7)

旅といへば 言にそやすき 少なくも 妹に恋ひつつ すべなけなくに

                         (巻15-3743)

我妹子に 恋ふるに我は たまきはる 短き命も 惜しけくもなし

                         (巻15-3744)

※たまきはる:命にかかる枕詞。


旅と、口で言うのは、実に簡単。しかし、その旅に身をおいてみると、あなたを恋焦がれているばかりで、どうにもならないのです。


私の愛しい妻に恋い焦がれる私としては、もう、こんな短い命であっても、惜しいとは思わないのです。


以上、中臣朝臣宅守の歌。


新婚早々、突然罪に問われ(政治事件らしい)、愛する妻から無理やり引きはがされた男の魂の叫びが続いた。

いずれの歌も、心のままに詠んでおり、実にわかりやすい。



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