第1091話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(6)

天地の 神なきものに あらばこそ 我が思ふ妹に 逢はず死にせめ

                        (巻15-3740)

命をし 全くしあらば あり衣の ありて後にも 逢はざらめやも

                        (巻15-3741)

逢はむ日を その日と知らず 常闇に いづれの日まで 我恋居らむ

                       (巻15-3742)


天地の神々が本当はおられないならば、私は思い焦がれる妻に逢うことなく死んでしまうだろうけれど。


私の命が無事であったなら、こうして(恋い焦がれながら)過ごしていて、やがて後の日に逢えないということもないだろうけれど。


逢える日を、その日がわからないけれど、その真っ暗闇の中で、いつの日まで、恋い焦がれ続けなければならないのだろうか。



この三首も、中臣朝臣宅守の歌。

やや、落ち着いて来たのか、「いつかは逢えるかもしれない」という希望をほのめかす。ただ、先の見えない状況であることには変わりが無いので、心は晴れない。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る