第1088話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(3)

思ふ故に 逢ふものならば しましくも 妹が目離れて 我居らめやも

                          (巻15-3731)

あかねさす 昼は物思ひ ぬばたまの 夜はすがらに 音のみし泣かゆ

                          (巻15-3732)

我妹子が 形見の衣 なかりせば 何物もてか 命継ぎまし

                          (巻15-3733)


思うだけで逢えるものならば、片時であっても、愛しいお前と別れてなどいられるだろうか。


昼はずっと物思いに沈み、夜は一晩中声をあげて、泣いているのです。


私の愛しい妻の形見の衣がなかったら、何をもって、命を継ぐ支えになるのだろうか。


※三首とも、中臣朝臣宅守の悲哀の歌。

 このような悲哀の歌が、十四首続く。

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