第1089話中臣朝臣宅守、狭野弟上娘子と贈答する歌(4)

遠き山 関も越え来ぬ 今さらに 逢ふすべよしの なきがさぶしさ

                      (巻15-3733)

思はずも まことあり得むや さ寝る夜の 夢にも妹が 見えざらなくに

                      (巻15-3734)

遠くあれば 一日一夜も 思はずて あるらむものを 思ほしめすな

                      (巻15-3735)


遠い山々も、関所も越えて来てしまった。今さら、(愛しいお前に)逢える手段など無いのが、実に寂しく辛い。


愛しいお前を思わずに過ごすことなど、実際できるものだろうか。眠る夜の夢にさえ、お前が出てきてくれるというのに。


遠く離れてしまったから、一日一夜くらいは、お前のことを思わない時間があるなどとは、思って欲しくない。


これも、流人中臣朝臣宅守が、遠く奈良にいる新妻狭野弟上娘子を偲んで詠んだ歌。

現代人の我々にも、実にわかりやすい、遠距離恋愛の心理を読んだ歌と思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る