第961話磯城島の 大和の国に 人さはに
磯城島の 大和の国に 人さはに 満ちてあれども
藤波の 思ひもとほり 若草の 思ひつきにし
君が目に 恋ひや明かさむ 長きこの夜を
(巻13-3248)
※磯城島の:「大和」に掛かる枕詞。
反歌
磯城島の 大和の国に 人二人 ありしと思はば 何か嘆かむ
(巻13-3249)
大和の国には、人が多くて満ちあふれているけれど、藤の花のように心にまとわりつかれ、私の心も萌え出した若草の色のように、ついて離れられません。
そんなあのお方に恋い焦がれるだけで、この長い夜を過ごし明かさねばならないのでしょうか。
この大和の国に、あのお方が二人あると思うことができるなら、どうしてこれほど嘆くことがありましょうか。
男を待つ女の歌。
「人二人 ありしと思はば」が、想像を呼ぶ。
おそらく、男には正妻がいて、この女は身分の低い妾の立場か。
だから、同じ男が二人欲しい、と思うのである。
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