第906話うらぶれて 物な思ひそ 天雲の

問答


うらぶれて 物な思ひそ 天雲の たゆたふ心 我が思はなくに

                       (巻11-2816)

うらぶれて 物は思はじ 水無瀬川 ありても水は 行くといふものを

                       (巻11-2817)


落ち込んで物思いをしないで欲しい。

空に浮かぶ雲のような浮ついた心で、私は貴方のことを思っているのでないのですから。

落ち込んで物思いはいたしません。

水無瀬川のように、人目にはつかなくても、水は流れ続けると言いますので。



男の不実を、女が疑ったのだろうか。

男は、不実と疑って、物思いに沈まないで欲しい。

浮ついた心ではなく、しっかりと貴方を思っていると詠む。


それに対して、女は「わかりました、そうします」「水無瀬川のように、目立たなくても、底を水が流れているものがある、と世間では言いますから」と、やや皮肉気味に返す。


やはり、疎遠になりがちで、はっきりと思いを示さない男には、女も不安になるし、皮肉や文句の一つでも、言いたくなるのだろう。

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