第896話あまたあらぬ 名をしも惜しみ 埋もれ木の

あまたあらぬ 名をしも惜しみ 埋もれ木の 下ゆそ恋ふる 行くへ知らずして

                              (巻11-2723)

※埋もれ木:土中の古木が炭化したもの。「下」にかかる枕詞。


いくつもあるわけではない私の名前が噂されるのを惜しんで、埋もれ木のように、ひそかに心の奥でばかり恋しているのです。

先々の行方も、わからないというのに。


ひそかに待ち続ける女性の歌だろうか。

他人の噂になることを恐れ、決して表には気持ちを明らかにしない、できない。

現代の日本でも、その傾向は残る。

無責任なネット中傷に傷つく人が、後を絶たない。


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