第879話二上に 隠らふ月の 惜しけども

二上に 隠らふ月の 惜しけども 妹が手本を 離るるこのころ

                       (巻11-2666)

※二上:二上山。奈良盆地の北西部、奈良県と大阪府が境を接するあたりに位置し、雄岳と雌岳が寄り添って並ぶ。左右に金剛・葛城山系と信貴・生駒山系。雄岳の頂上には、謀反の罪(冤罪説あり)で命を落とした悲劇の皇子・大津皇子が眠る。


二上山に隠れて行く月が名残惜しいけれど、今は、愛しい妻の手枕から離れたままになっている、そのほうが寂しい。


待つだけの女も寂しいけれど、行くに行けない事情を抱えた男も、また寂しいのである。

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