第873話天雲の 八重垣隠り 鳴る神の

天雲の 八重垣隠り 鳴る神の 音のみにやも 聞きわたりなむ

                       (巻11-2658)

空に浮かぶ雲の八重垣の奥に隠れて、雷は鳴り響くけれど、あの人の噂も怯えて聞き続けるしかないのでしょうか。


通わなくなった男の噂だけは耳に入って来る。

「他の家に(女の家)に通うようになった」、そんな噂の声が高まっているのだろう。

そんな噂を聞くたびに、「捨てられたかもしれない」との不安や怯えが、女の心を直撃する。

不安に怯える女にとって、人の噂は、鳴り響く雷音にも、聞こえて来るのである。

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