第870話紅の 裾引く道を 中に置きて
紅の 裾引く道を 中に置きて 我通はむ 君か来まさむ
(巻11-2655)
紅の裳の裾を引いて、貴方との間を隔てている道を、私が通いましょうか、それとも貴方が来られますか。
女の歌。
なかなか通って来ない男に、そんなことなら、紅の裳の裾を引いてでも、道を歩いて私が通いますと、強く迫る。
それが貴方にとって困ることなら、お越しになられますか、と女から妻問いを強く求めている。
古代は、原則は妻問い婚だったけれど、男が通って来ないと、業を煮やして、妻が押し掛ける場合もあったようだ。
一歩間違えれば、「別の妻」との、修羅場も予想される歌である。
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