第859話灯火の かげにかがよふ うつせみの

灯火の かげにかがよふ うつせみの 妹が笑まひし 面影に見ゆ

                        (巻11-2642)


灯火の火影にゆらゆらと、まるで今、目の前にいるように妻の笑顔が浮かんで見えている。


この歌を詠んだ事情は、様々に考えられる。

まずは、直接に妻と相対していないことは同じである。

さて、妻の家に出向こうとする時なのか。

あるいは、出向けない事情があり、目に入った灯火の火影の中に、愛する妻の笑顔が、浮かんで来たのか。


いずれにせよ、逢いたくて仕方がない気持ちが、幻影を見せるのである。

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