第858話時守の 打ち鳴す鼓 数みみれば
時守の 打ち鳴す鼓 数みみれば 時にはなりぬ 逢はなくも怪し
(巻11-2641)
※時守:時刻を知らせる役人。陰陽寮の管轄。日本書記には斉明天皇6年(660)に皇太子だった中大兄皇子が漏刻(水時計)を作り、天智天皇10年(671)にはじめて鐘鼓を打ち、時を知らせたと伝えている。時間の経過は鼓や鐘の音で知らされた。
「時」は一日を十二等分して十二支の名で呼び、子・牛は9回、丑・羊は8回。寅・申は7回。卯・酉は6回。辰・戌は5回。己・亥は4回太鼓を鳴らした。
尚、この歌の場合は、おそらく4回連打の亥の刻(午後10時)と思われる。
時守が打ち鳴らす鼓の数を数えてみると、既に逢瀬の時には、なっているのです。
それなのに、逢えないというのは、どうしたことでしょうか。おかしいと思うのです。
逢えるはず、来てくれるはずの男を待ち続けるけれど、耳を澄ましても男の足音は聞こえてこない。
時守の鳴らす鼓の音だけが、聞こえて来る状態。
情けないような失望感を、この歌に感じる。
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