第819話しきたへの 枕動きて 夜も寝ず
しきたへの 枕動きて 夜も寝ず 思ふ人には 後も逢ふものを
(巻11-2515)
しきたへの 枕は人に 言問へや その枕には 苔生しにたり
(巻11-2516)
※しきたへの:枕にかかる枕詞。
寝返りばかりをして、枕だけが動いて、夜も眠れません。愛する人には、やがて逢えるとわかっているのに。
さて、その枕は人に言葉をかけるものなのでしょうか。
とても、そうは思われません。
その枕には、すでに苔が生えているのですから。
甘い言葉で、次の逢瀬を言ってくる男に対して、実は夜離れが続いているのか、女は強烈な皮肉、あまり来ないので枕に苔が生えてしまいました、と返す。
苔が生えた原因は、不実な男を待ち続けた女の涙かもしれない。
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