第817話赤駒が 足掻き速ければ 雲居にも

赤駒が 足掻き速ければ 雲居にも 隠り行かむぞ 袖まけ我妹

                       (巻11-2510)

こもりくの 豊泊瀬道は 常滑の かしこき道ぞ 汝が心ゆめ

                       (巻11-2511)

※こもりくの:「泊瀬」の枕詞。

味酒の みむろの山に 立つ月の 見が欲し君が 馬の音ぞする

                       (巻11-2512)

※味酒の:「みもろ」の枕詞。

※みもろの山:三輪山。「みもろ」は神の籠る土の盛り上がった場所。


赤駒は、駆けるのが、とにかく速い。

雲のかなたに、あっという間に隠れてしまうほどに。

だから、私はその赤駒に乗ってお前の家に駆けて行く。

家についたら、すぐに袖を巻いて愛し合おう。


山深い泊瀬の道は、いつもつるつると滑りやすく恐ろしいのです。

あなたは、そんなに焦らず、油断しないでいらしてください。


三輪山に昇る月のように、お逢いしたくて仕方がなかった貴方の馬の足音が聞こえて来ました。


足の速い赤駒に乗り、とにかく愛する女の所に早く行って、共寝をしたい男に対して、女は山道は滑りやすいから本当に気をつけてと返す。

そして、とうとう、安全に到着したのか、馬の足音が聞こえて来た。


特に、女が男の途中の事故を心配する歌が、効いている。

それがあって、最後の歌の安堵感が生きて来る。

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