第809話大船に ま梶しじ貫き 漕ぐほとも

大船に ま梶しじ貫き 漕ぐほとも ここだ恋ふるを 年にあらばいかに

                          (巻11-2494)

※漕ぐほども:「ほと」は「程」「間」より短い刹那。


大船に左右の楫を通して、漕ぎ続ける、そんな刹那の間でも、あの娘のことがこれほど恋しいというのに、一年も間が空いたなら、いったいどうなってしまうのだろうか。


船旅に出て直後の歌と思われる。

「年」とあるので、船を利用しての、官僚の地方への一定期間の赴任かもしれない。

寂しくても勅命には逆らえない。

それもわかっているけれど、寂しい気持ちには、嘘はつけない。

素直で、また切実な歌である。

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