第606話妻に与えた歌と、妻からの反論
妻に与へし歌一首
雪こそは 春日消ゆらめ 心さへ 消え失せたれや 言も通はぬ
(巻9-1782)
妻の和せし歌一首
まつがへり しひてあれやは 三栗の 中上り来ぬ 麻呂といふ奴
(巻9-1783)
右の二首は、柿本朝臣人麻呂の歌の中に出づ。
※まつがへり:「しひて」の枕詞。鷹の松返りから。鷹が戻るべき手許ではなく、高い松の木に返ってしまう意味と思われる。
※しひてあれやは:「しふ」は身体に障害がある意味。
※三栗の:「中」の枕詞。
※中上り:地方官が任期中に報告のため、京に上ること。
※麻呂:男性の一般名詞。
妻に与えた歌。
雪だけが春になれば解けて消えると思っていたけれど、あなたは私への気持ちまで消え失せてしまったようです、全く何も連絡がないので。
妻が答えた歌。
あなたのほうこそ、どこかおかしいのではないですか。
私に逢おうと、中上りもして来ないのですから。
その麻呂という奴は。
設定としては地方に赴任した夫と、京で待つ妻。
柿本人麻呂が、夫と妻の立場で、宴会で詠んだ歌との説もある。
いずれにせよ、これは妻の勝ち。
古代から、男性は、口では女性にかなわないということだろうか。
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