第602話鳴く鹿を詠みし一首
鳴く鹿を詠みし一首 短歌を并せたり
みむろの 神奈備山に 立ち向かふ
三垣の山に 秋萩の 妻をまかむと
朝月夜 明けまく惜しみ
あしひきの 山彦とよめ 呼び立て鳴くも
(巻9-1761)
※みむろの 神奈備山:奈良県高市郡明日香村橘寺東南のミハ山。あるいは南渕山、甘樫丘、雷丘、飛鳥座神社背後の山も候補地。確定されていない。
※三垣の山:瑞垣のように取り巻く山々の意味。明日香東方の多武峰説あり。
反歌
明日の宵 逢はざらめやも あしひきの 山彦とよめ 呼び立て鳴くも
(巻9-1762)
右の件の歌は、或いは云く、「柿本朝臣人麻呂の作なり」といふ。
みむろの神奈備山に向かい合う三垣の山では、雄鹿が秋萩の妻と共寝をしたくて、有明の月夜が明けるのを惜しみ、山彦が大きく響くほどの大きな声で、呼び立てて鳴いている。
明日の宵には、再び逢えるのに、山彦が大きく響くほどの大きな声で、呼び立てて鳴いている。
夜に鹿が大きな声で鳴いている、客観的にはそれだけになる。
「キューン」とかん高い、もの悲しいような声で鳴くから、こんな歌も生まれたのだと思う。
それに対して妻を呼ぶなどの推測が付け加えられる。
現代では奈良公園界隈に住まなければ、ほとんど鹿の鳴き声を聞くことはない。
これも日本人の生活空間から、ほぼ消え去った世界。
なかなか、実感としては、わからないかもしれない。
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