第560話佐保川の 水を堰き上げて 植ゑし田を
尼の頭句を作り、幷に大伴宿祢家持の、尼に誂へられて末句等を続きて和せし歌一首
佐保川の 水を堰き上げて 植ゑし田を(尼作る)
刈れる初飯は ひとりなるべし(家持続ぐ)
(巻8-1635)
尼が上の句を作り、そして大伴宿祢家持が尼に頼まれて下の句を作って答えた歌一首
佐保川の水を堰き止めて水を引き苦労して植え育てた稲田から(尼が作った)
その思いと苦労が宿る稲を刈って炊いた新米のご飯は、田の主である貴方一人のもののはずと思うのです(家持が作った)
尼は未詳。
大伴家持との連歌の形式。
日本における連歌の実質的な源流をなすと言われている。
巻8-1633、1634と同じ尼と思われているけれど、作歌事情が不明。
大伴家持から、何らかの支援を得ていた尼と、その娘らしい。
尼としては、苦労して育てた娘を下手な男に奪われたくもないし、しかし、今は現世を離れた尼の身分。
それだから、娘の将来を大貴族に大伴家持に委ねる気持ちで、下の句を頼んだのかもしれない。
ただ、大伴家持は、尼の娘を娶る気持ちがなかったのか、「まずはお母様である尼様のところに」と答える。
中途半端といえば、そうなるけれど、古来明確な事情を記したものはない。
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