第402話時に臨みき(11)

今年行く 新防人が 麻衣 肩のまよひは 誰か取り見む

                    (巻7-1265)


※防人:九州北辺の筑紫、壱岐、対馬などの守備にあたった。東国から派遣され任期は規定では3年。必ずしも守られなかった。

※麻衣:麻の衣は、貧しい衣服。

※まよひ:織物の糸がほつれ、破れそうになること。


今年出発することになった、新しい防人の麻の衣、その衣の肩のほつれは誰が繕うのだろうか。


愛しい人、あるいは愛しい子供を、遠く北九州まで送り出す妻か母が詠んだとされている。

国家の命令を拒絶は出来ない、国に対しても重罪で、その後の地域社会でも生きて行けない。

だから「貴方の命が不安だから行って欲しくない」などとは直接詠めない。

長旅に際して、貧乏の象徴でもある麻衣しか着せてあげられない惨めさ。

その惨めな麻衣が、長旅でほつれたら誰が繕ってくれるのだろうかと、寂しくて複雑な思いを詠む。

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