第401話時に臨みき(10)

西の市に ただひとり出でて 目並べず 買ひてし絹の 商じこりかも

                           (巻7-1264)

西の市にひとりで出かけて、見比べることもなく絹を買ってしまった。

その絹は、とんでもない買い損ないだった。


平城京の西の市は、絹の店があった。

その中には不良品も並べて売られていたのかもしれない。

一人で買い物に出かけてしまい、商品をよく見ることもせず、絹店の店主などに誤魔化されて質の悪い絹を買ってしまったのだろうか。

結局、ひどく悔いている。


別の解釈では、仲人に騙されて、見掛け倒しの配偶者を得たことを悔いる気持を詠んだ歌。

そうなると「ただひとり」は、「婚期が遅れて一人残ってしまった」。

だから焦って「絹を売る西の市」が「女を紹介する仲人」。

その仲人の「ああ、いい女ですよ」との口車に乗せられて、相性の悪い女と結婚してしまったのかもしれない。

結果として、仲人への謝礼は大損にもなるし、その後の結婚生活も暗澹たるもの。


ただ、このボヤキのような歌への、妻の反論も聞いて見たい気もする。


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