第338話 岳を詠みき

片岡の この向かつ峰に 椎蒔かば 今年の夏の 陰にならむか

                      (巻7-1099)


片岡山の、この向かいの峰に、椎の実を巻いたならば、今年の夏には育って日陰になってくれるのだろうか。


※片岡山:奈良県北葛城郡王寺町から香芝市あたりまでの丘陵。


椎の実を蒔いて、その年の夏の日陰になるまで成長することはありえない。

したがって、何らかの寓意を持つ歌と思われる。

「片岡山に片思いをかけて、恋の実を蒔いて、夏には実らせたい」という説があるけれど、そうなると「岳を詠みき」と、馴染まない。

向かい側の岡には、木が乏しいので、酷暑の夏には歩くのが辛い、それだから椎の実を植えよう、できたら早く育って欲しいとの願いを込めたか。


古来、歌意が確定されていない歌の一つである。

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