第313話雨隠もる 三笠の山を 高みかも

安倍朝臣虫麿の月の歌一首


雨隠もる 三笠の山を 高みかも 月の出で来ぬ 夜はふけにつつ

                         (巻6-980)


※雨隠もる:「笠」にかかる枕詞


三笠の山が高いからなのでしょうか、夜はふけていくのに、月が姿を見せてくれないのです。


雨隠もるは、笠の枕詞であるけれど、この歌を詠んだ夜は、実際に雨が降りそうな雲が多い空だったのかもしれない。


さて、なかなか姿を見せない月を待ち続けるのは、なかなか風情。

徒然草第百三十七段の「花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。

雨に向ひて月を恋ひ、たれこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し」

を思い出した。



※作者は坂上郎女の従兄弟。

※続く「大伴坂上郎女の月の歌三首」と同じ宴と思われる。


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