第310話我が背子に 恋ふれば苦し

同じ坂上郎女の、京に向かふ海路にして浜の貝を見て作りし歌一首


我が背子に 恋ふれば苦し 暇あらば 拾ひて行かむ 恋忘れ貝

                        (巻6-964)


※忘れ貝:二枚貝の片方だけになったもの。恋忘れ貝は、恋心を忘れることができるとされた貝。


貴方を恋して苦しくてたまりません。時間があれば、その恋を忘れるという貝を拾って行こうと思います。


坂上郎女は、大宰府滞在中、心を通わせられる親しい人が出来たのかもしれない。

海路を進みながら、もう一度逢いたいと思ったのではないか。

たまたま、忘れ貝を見かけて、それを拾えば都への長い道中、その思いを忘れることができるのかもしれないと思ったようだ。





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