第305話さす竹の 大宮人の

太宰小弐石川朝臣足人の歌一首


さす竹の 大宮人の 家と住む 佐保の山をば 思ふやも君

                      (巻6-955)

※さす竹:大宮にかかる枕詞。

※大宮人:首都平城京の官人。


帥大伴卿の和せし歌一首

やすみしし 我が大君の 食す国は 大和もここも 同じとそ思ふ

                      (巻6-956)


大宮人が家として住む佐保の山あたりを、あなたは懐かしく思われますか。


大君が治められる国は、大和であっても、ここであっても、同じなのです。



神亀5年(728)、京官を任じられ離任する太宰小弐石川足人と、新任の帥大伴旅人との贈答歌。

「都の佐保の大邸宅を離れて、はるばる大宰府に来られましたが、やはり懐かしく思われるでしょう」との石川足人に、着任直後の大伴旅人は、「いや、我が大君の治める国には変わりはありません、ここで尽力をいたします」と返す。

懐かしいなどと不用意に言えば、余計な疑いを持たれかねないし、佐保に残してきた一族への危険も生じかねない。

無難な答えであるのは、大伴一族を束ねる旅人としては、当然のことになる。

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