第256話紀女郎と大伴宿祢家持
紀女郎の、大伴宿祢家持に贈りし歌二首 女郎は名を小鹿と曰ふ
神さぶと いなぶにはあらず はたやはた かくして後に さぶしかむけも
(巻4-762)
玉の緒を 沫緒に縒りて 結べばありて 後に逢はざらめやも
(巻4-763)
大伴宿祢家持の和せし歌一首
百歳に 老い舌出でて よよむと我は いとはじ恋は益すとも
(巻4-764)
もう、大年増だからと貴方を拒まむのでははありません。もしかして、こんな逢瀬をしてしまってい思いをするのでしょうね。
玉の緒を水沫の緒で結ぶことが出来るなら、いつか後に逢えないこともないでしょう。
貴方が百歳になって、老人そのものの、しまりのない舌が出て、腰が曲がったとしても、嫌いなどはしません、恋心が増すことがあっても。
紀女王は安貴王の妻。大伴家持からは相当の年上の女性。
そのため「神さぶ」、年を経て古びた「大年増」と少し引く。
実際に家持と関係を持ったかは不明、性道徳の緩い時代ではあるけれど、坂上大嬢にのめり込んでいる家持をからかったのかもしれない。
玉の緒は、水ので出来た玉を結んだ緒で、命の儚さを表現する。
その儚い玉をさらに水沫の緒で結ぶなど、さらに困難が高まる。
つまり、私と貴方では無理ということ。
坂上大嬢への遠慮があるのかもしれない。
大伴家持の返歌も、なかなか面白い。
「百歳になって、舌はもつれて腰曲がりになっても嫌いになりませんよ、恋は増しますが」などは、少し言い過ぎな気もするけれど、そんな戯言を言いかわせる関係だったようだ。
坂上大嬢との恋に悩む家持には、ちょっとした気分転換だったのかもしれない。
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