第243話坂上大嬢の、大伴家持に贈りし歌三首

大伴坂上大嬢の、大伴宿祢家持に贈りし歌三首


玉ならば 手にも巻かむを うつせみの 世の人なれば 手に巻きがたし

                           (巻4-729)

逢はむ夜は いつもあらむを 何すとか その夕逢ひて 言の繁きも

                           (巻4-730)

わが名はも 千代の五百名に 立ちぬとも 君が名立たば 惜しみこそ泣け

                           (巻4-731)


玉であるならば、我が手に巻きつけて離さないものを、貴方はこの世の人なので、とても手に巻きつけておくことなどはできません。


お逢いする夜などは、他の夜でも何時の夜でもあったでしょうに、どうしてあの日の夜に逢ってしまったのでしょうか、とにかく人の噂が激しいのです。


私の名前など、どれだけ立ってもかまいませんが、貴方の名前が立ってしまうのが申し訳なくて泣いてしまうのです。

※千代の五百名:噂がすごいことの、やや大げさな表現。


まず、名うてのプレイボーイの大伴家持なので、とてもとても、私の手に巻きつけて置くことなでできませんよ、と強烈な皮肉。


それでも逢ってしまって、噂が立ってしまった。

それが恥かしいので、他にも人知れず逢えた夜もあるのに、なぜ、あの日の夜に逢ってしまったのか、これも逢って共寝をしておきながら、「どうしたらいいの?」との意味だろうか、それとも「噂がうるさいから、さっさと決めて欲しい」の意味を込めたような気がする。


それでも相手の大伴家持は、大豪族大伴氏を背負う大人物。

私は、噂を立てられてもかまわないのです、貴方がそういう噂で苦しむのが辛くて泣いてしまうのです、この裏には、「もう求婚は受け入れていますよ」があると思われる。



男女の結婚前には、実に様々な出来事やら障害がある。

それは、現代のラブコメからラブロマンスまで、全く変わらない。

ただ、結婚してしまえば、現実の生活をこなさなければならない。

とてもロマンスやらの、浮ついた夢などは、見る事はできなくなる。




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