第242話大伴宿祢家持の、坂上の家の大嬢に贈りし歌

大伴宿祢家持の、坂上の家の大嬢に贈りし歌二首

離絶すること数年にしてまた会ひて相聞往来しき


忘れ草 我が下紐に 着けたれど 醜の醜草 言にしありけり

                       (巻4-727)

人もなき 国もあらぬか 我妹子と 携ひ行きて たぐひて居らむ

                       (巻4-728)


恋心を忘れるという忘れ草を私の下紐に着けたけれど、このいまいましくて仕方がない草は、名ばかりの草でした。


知る人などいない国がないものだろうか、愛しい貴方と手を携え歩いて、寄り添っていたい。



大伴家持と坂上大嬢(坂上郎女の娘)は、やがては結婚することになるけれど、この歌の時期は、一定期間(約8年間の説あり)の離別期間後に再会し再び恋しあうようになる時期。

忘れ草は、ヤブカンゾウやノカンゾウなどのカンゾウ類。恋心を忘れさせてくれると言われていた。

恋多き大伴家持も、ついに身を固めようと思ったのか。

結局は、幼なじみの、いとこの坂上大嬢に「忘れられなかった、もう一度一緒に」と声をかける。

知る人がいない国は、過去の女性との噂を言われない国なのだろうか。

とにかく過去を振り切り、必死に求婚する気持ちがあふれている歌と思う。



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