第189話紀女郎の怨恨の歌(3)

白たへの 袖別るべき 日を近み 心にむせひ 音のみし泣かゆ

                       (巻4-645)


別れの日が近くなり、私は心の中ではむせび、声をあげて泣いています。


心ならずも、愛する夫とは別れることになってしまった。

その日が近くなると、それを恨みつつ、泣くしかない。

何しろ不敬罪、采女に横恋慕した夫安貴王への気持ちは、実に複雑。

悔しいやら哀しいやら怒りやらだろうけれど、想いは無理やり断ち切るしかない。

自分を裏切り、帝まで裏切った夫に、実際に声をあげて泣くことは、難しい。

だから、心の中でのみ、声をあげてむせび泣く。


この歌も、なかなか辛い歌と思う。

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